こんなものをまともに読んでいたら、それ自体が仕事になってしまう。実際、教頭はそうした文書業務で忙殺される。しかも、その文書のほとんどを作っているのは「指導主事」という名の教員だ。教育委員会側の教員なのだ。

 実にもったいないと思う。この膨大な書類仕事をゼロにできれば、書類を作って出す方の指導主事と、学校現場で受ける方の教頭を合わせて、全国で約10万人が教員本来の仕事に戻れるのだから。

 はっきり言おう。教員が足りないというのはウソだ。

 文書仕事が多過ぎて、指導主事と教頭が死んでるからそうなってしまう。

 まず、要らない書類は何か。

 何よりも筆頭に挙げたいのは、「アンケート」だ。

 例えば、いじめ自殺問題がマスコミで大きく報道されると、国会議員が国会で文科省に「どうなってるんだ!」と質問する。文科省はデータを持っていないから、アンケートを作って都道府県の教育委員会に降ろす。「学校では、日常的にいじめに目を光らせていますか?」「いじめの発見のためのアンケートを毎学期とっていますか?」「発見した場合、どのように対処していますか?」と多数の項目が並ぶ。

 都道府県でも都道府県議会議員が同じような質問をするから、都道府県教委も独自にアンケートを作って降ろしてくる。さらに、小中学校の場合は市区町村が設置者だから、市区町村議会議員が議会で質問すると、ここでも、もっと詳細なアンケートが作られる。

 つまり、一つ課題が生じると、国と都道府県と市区町村が三重にアンケートを作って学校に降ろしてくるというわけだ。

 もちろん、いじめや自殺は大事件だから大騒ぎも当然だし、対処しないのは言語道断だ。

 しかし、食育についてとか、尖閣諸島や北方領土の地理での扱いについてとか、「こころの教育」についてとか、リモート教育についてとか、マスクについてとか……アンケートが多岐にわたって際限がない場合は何とかするべきだろう。

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アンケートを見直せば現場が変わる