――ご結婚25年の際は、当時皇太子・皇太子妃だったお二人と愛犬の由莉が写ったご近影が公開されましたが、今回は親子三人でご公務に励む姿を撮影したものでした。愛子さまの存在をアピールする意図もあるのでしょうか?

愛子さまが昨年成人されたので、そろそろ単独公務が始まることを見据えているのだと思います。まずは家族で様々な活動に取り組む姿を見せて、最終的には単独公務へ、というフローなのでしょう。さすがに、女性天皇という将来像まで意識した露出ではないと思います。単独公務が始まるタイミングはわかりませんが、愛子さまは来年大学を卒業した後は留学される可能性もあるのではと思っています。今年4月、天皇陛下がイギリス留学時代についてつづった書籍『テムズとともに』が復刊されたのも、その布石かな、と推察しました。そうすると、単独公務のスタートは卒業から留学までの間か、留学後かでしょうか。

――今年4月、宮内庁内に広報室が発足し、SNS導入をふくめ時代に合った情報発信の在り方が検討されています。今回公表されたご近影の動画は、相変わらず音声が削除されたものでしたが、どう受け止めていますか?

 動画として、音声がないのはやはり不自然だと思います。以前に比べると、宮内庁ホームページに掲載される写真や動画に説明書きを加えるようになったりと、改革に向けた努力は見られますが、やはり皇室の権威性を保つために、“玉音”を聞かれるのは嫌なんでしょうね。もちろん、天皇や皇族としての品位はあるところまでは保たなければいけないと思います。たとえば皇族の方々がツイッターで「儀式なう」とつぶやくとか、そこまでやる必要はありません。ただ、本人たちがしゃべっている言葉をあえて消してしまっては、国民との親しみが失われてしまうし、そもそも時代遅れではないかと思います。両陛下が、国民に寄り添い、国民のなかに入っていくスタイルを望んでいるのであればなおのこと、宮内庁は“令和流”の情報発信の仕方を考えるべきでしょう。官僚的な組織である以上、なかなかスピーディーに動けないとは思いますが、各国の王室の状況などを見つつ、時代に合わせて、できるだけ早く変革を進めるべきではないでしょうか。もしかしたら、愛子さまの単独公務デビューがひとつのきっかけになるのかもしれません。

(聞き手・構成/AERA dot.編集部・大谷百合絵)

●河西秀哉(かわにし・ひでや)

1977年、愛知県生まれ。歴史学者。名古屋大学大学院人文学研究科准教授。単著に『近代天皇制から象徴天皇制へ』『天皇制と民主主義の昭和史』『平成の天皇と戦後日本』など

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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