イメージです(GettyImages)
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 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性(当時51)から依頼され、薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人の罪などに問われた元医師の山本直樹被告(45)。5月29日、京都地裁で初公判が開かれ、被告側は無罪主張を展開した。共謀して起訴された知人の医師、大久保愉一(よしかず)被告(45)=別で審理=が実行犯だと訴えた。

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 山本被告の起訴内容は、大久保被告と共謀し、2019年11月、殺害の依頼を受けた京都市の女性のマンションで、薬物を女性の体内に取り入れさせて急性薬物中毒で死なせたというもの。

 起訴内容について山本被告は、

「(女性の)自宅に入ったが(大久保被告と)共謀も実行もしていない」

 と否認した。

山本直樹被告(ツイッターから)
山本直樹被告(ツイッターから)

 一方、検察側は冒頭陳述で、大久保被告と女性の2人が知り合ったツイッターのダイレクトメッセージで連絡を取り合い、女性から現金を振り込んでもらってから犯行に及んだ経緯など、詳細について述べた。(以下「◇」内は冒頭陳述の内容)

 ◇  ◇  ◇

 女性と連絡を取り合うようになったのは大久保被告で、ツイッターのダイレクトメッセージ機能を使っていたという。

 女性は2018年に、

「勇気を出してツイッター始めました。海外で安楽死を受けるため始動します」

 とつづっている。

 それを見た大久保被告は、女性とやりとりを始めるようになる。

「なんなら当院にうつりますか? 自然な最期まで導きますが」

 とツイートすると、

「決意したらよろしくお願いします」

 と女性が応じている。

 そして大久保被告は山本被告と、犯行についてメールでやりとりを重ねていた。証拠として法廷で開示されたメールでは、2019年11月、大久保被告は、

「近々京都に行く用事ない? 旅費を出してくれるというALS患者のところに行って様子を見てほしい」

 と山本被告に頼んでいる。

 一方、大久保被告とやりとりをしていた依頼者の女性は、

「旅費を含めて経費はすべてもたせていただきます」「先生だけが救いであり希望です」

 とダイレクトメッセージで送っていた。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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