「現職の総理大臣に爆弾を投げつけるというとんでもない事件です。岸田首相らにけがはなかったので、捜査当局としては殺人未遂容疑で立件したいと察します。しかし、供述がないと殺人未遂での再逮捕は厳しい。爆発物取締罰則は、死刑求刑までできる重いものなので捜査当局のメンツも立ちます。今後は、鑑定留置で数カ月間調べて、責任能力があると判断されれば起訴という方向になるのではないでしょうか」

 これだけの事件を起こした木村容疑者は昨年6月、年齢制限などによって参院選に立候補することができなかったとして、国家賠償請求の訴えを起こしている。

 なぜ、政治家を目指したかについてはいまだにわからないが、木村容疑者の親族の話では、以前から政治に関心を示していたようだ。

「(木村容疑者は)かなり前から政治に興味を持っていたのは確かなようです。成人する前から選挙があると掲示板のポスターを一生懸命見たり、新聞やテレビで政治のニュースを熱心に見ていたり。政治関係の本やネットのニュースも読んでいました。自民党には批判的で、野党を支援するようなことを言っていたので、政治になんらかの不満はあったのかな」

 だが、木村容疑者が選挙に出馬したいという話は聞いていなかったという。

 木村容疑者は、地元の中学から高校を受験した。中学時代の同級生がこう話す。

「中学時代にいじめられて不登校になり、性格は暗くなっていきました。だけど不登校の期間はそれほど長くなかったはずです。中学3年のときは学校に来ていたし、卒業式にもいたはず。ただ、中学時代はいつもひとりぼっちでいたかな。地元の高校を受験して合格したと聞いたけど、それ以降、消息はわからなかった。選挙に出るとか、岸田首相に爆弾を投げつけるとか、あまりにイメージが違い過ぎて驚くばかりです」

 木村容疑者が黙秘を続けているため、現場に容疑者を連れて行き、状況を確認する「引き当たり」捜査も実施されない模様だ。木村容疑者の“姿”が見えるようになるのはいつなのだろう?

(AERA dot.編集部 今西憲之)

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今西憲之

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大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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