日本ハムのコーチに就任した金子千尋氏
日本ハムのコーチに就任した金子千尋氏

 プロ野球は厳しい世界だ。活躍すれば年俸が大幅に上がるが、期待に見合う成績を残せなければ大幅ダウンになる。1億円以上の大幅ダウンを経験したプロ野球OBは「税金の支払いで手元にお金がほとんど残らなかったよ。活躍しているときこそ貯金とか資産形成をしっかりしないといけないね」としみじみと語っていた。

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 過去のNPBの契約更改で報じられた推定年俸のアップ額、ダウン額を調査すると、以下のようなランキングになった。アップ額の上位5選手は以下の通りだ。※カッコ内は当時の所属球団、年俸は推定、敬称略。

  • 1位 金子千尋(オリックス)2015年度 4億円アップ
    14年度成績 26試合登板、16勝5敗、防御率1.98
  • 2位 村上宗隆(ヤクルト)23年度 3.8億円アップ
    22年度成績 141試合出場、打率.318、56本塁打、134打点、12盗塁
  • 3位 浅村栄斗(楽天)20年度 2.9億円アップ
    19年度成績 143試合出場、打率.263、33本塁打、92打点、1盗塁
  • 3位 金本知憲(阪神)07年度 2.9億円アップ
    06年度成績 146試合出場、打率.303、26本塁打、98打点、2盗塁
  • 5位 山本由伸(オリックス)23年度 2.8億円アップ
    22年度成績 26試合登板、15勝5敗、防御率1.68

 1位に輝いた金子は14年度に最多勝、最優秀防御率を獲得したほか、球団史上初の沢村賞を受賞。チームはソフトバンクとの熾烈な優勝争いの末に惜しくも2位に終わったが、パ・リーグMVPに選出された。同年オフにポスティングシステムでメジャー挑戦の可能性が取り沙汰されたが、4年契約で残留を表明。単年で推定6億円となり4億円アップとなった。

 2位は「村神様」こと村上だ。昨季は日本選手最多の56本塁打を樹立し、22歳と史上最年少で三冠王に輝いた。チームの中心選手としてリーグ連覇に貢献。オフに推定6億円の3年契約を結んだ。さらなる進化を目指す村上に、この年俸が高いとは感じない。3年契約が終了する25年オフにポスティングでメジャー挑戦する可能性が十分にある。メジャーの各球団が熱視線を送っていることから、年俸がさらに大幅アップすることは間違いない。

 5位の山本は昨年に2年連続「投手5冠」を達成。リーグ連覇、26年ぶりの日本一に貢献し、大幅アップを勝ち取った。昨オフにチームメートの吉田正尚がポスティングシステムを認められ、レッドソックスに移籍。5年総額約123億円と破格の契約内容だった。メジャー志向が強い山本も今オフの去就が注目されている。海外移籍が容認された際は、現在の年俸から4倍近い条件提示をする球団が現れる可能性は十分にある。

 一方、ダウン額のランキングは以下の通りだ。※カッコ内は当時の所属球団、年俸は推定。

  • 1位 金子千尋(日本ハム)2019年度 4億5000万円ダウン
    18年度成績 17試合登板、4勝7敗、防御率3.87
  • 1位 杉内俊哉(巨人)16年度 4億5000万円ダウン
    15年度成績 17試合登板、6勝6敗、防御率3.95
  • 3位 田中将大(楽天)23年度 4億2500万円ダウン
    22年度成績 25試合登板、9勝12敗、防御率3.31
  • 4位 松坂大輔(中日)18年度 3億8500万円ダウン
    17年度成績 1軍登板なし
  • 5位 鳥谷敬(ロッテ)20年度 3億8400万円ダウン
    19年度成績 74試合出場、打率.207、0本塁打、4打点、1盗塁

 大幅ダウンは、主力で高年俸だった選手がチーム構想から外れ、退団して移籍したケースが多い。アップ額でランキング1位の金子は、ダウン額のランキングでも1位タイに。15年からの4年契約が切れた18年オフの契約更改で、オリックス側から野球協約の減額制限を大幅に超える減俸を提示された。金子は自由契約を決断し、日本ハムに移籍した。4位の松坂もソフトバンクに3年総額12億円の大型契約でメジャーから15年に復帰したが、右肩痛に苦しみ在籍3年間で1軍登板は1試合のみ。17年オフに退団し、中日に移籍。18年に6勝をマークしてカムバック賞を受賞し、同年オフの契約更改では6500万円増の推定8000万円でサインした。5位の鳥谷も阪神の主力選手として長年活躍していたが、若返りを図るチーム構想で19年に引退勧告を受けてロッテに移籍。2年間プレーして21年限りで現役引退した。

 金子と同率で1位の杉内は15年度に6勝をマークしたが、右股関節の手術を受けて復帰のめどが立たなかったため球界史上最大タイの大減俸に。懸命なリハビリで1軍のマウンド復帰を目指したがかなわず、3年後の18年限りで現役引退した。

 3位の田中は昨オフに日本球界最高額から大幅減俸となった。打線の援護に恵まれない登板が多く同情の余地はあるが、メジャーから楽天に復帰して2年間で13勝21敗という数字に、本人が一番納得していないだろう。日米通算200勝まであと10勝に迫り、今季は3月30日の日本ハム戦で開幕投手を務めることが発表されるなど球団の期待は大きい。10年ぶりのリーグ優勝に向けて田中の力は不可欠だ。エース復権の投球を期待したい。(今川秀悟)