それゆえ、教員自身のメンタルも安定していないとも言われている。文科省の「公立学校教職員の人事行政状況調査」(2021年度)によると、精神疾患を原因とする教員の休職者は5897人で過去最高に。1989(平成元)年度の1037人に比べると、約5倍となる。
 
「教員数が増えることもないですし、こんな状況では受け持つ子どもがいじめられているかどうかを把握するのは簡単ではない。客観的事実でいじめを認定できる弁護士などによる第三者の存在が、いまの教育現場には必要です」(内田教授)
 
 東京海上日動はこれまで、同社が提携している弁護士に電話で無料相談ができる特約を提供してきた。そこでは、弁護士から加害者側に損害賠償請求を起こす場合、どうすればいいかなどのアドバイスが受けられる。個々のケースに合わせて、いじめと認定するために必要な方法を指示してもらうことも可能だという。

 自分で弁護士を選定することになるものの、弁護士と損害賠償請求を加害者側に起こす場合、弁護士費用として上限300万円が保証される。
 
 内田教授は、今回の東京海上日動の保険について、
 
「弁護士への相談ではなく、カウンセリングや転校の際にかかった費用の補償で、学校側のニーズの理解が保険業界で広がってきています。これまではカウンセリングなどの費用は、災害共済給付金では出なかったですから。費用を気にせず容易に相談ができることで、被害の深刻化も防げると思います」
 
 との見方を示す。
 
 災害共済給付金とは、災害共済給付制度に基づき独立行政法人・日本スポーツ振興センターが支払う医療費や見舞金だ。
 
 学校の管理下でのけがや死亡、いじめや体罰などが原因の自殺などが対象だが、いじめを受けたことでの民間によるカウンセリング費用に対して支払われるという例はなかなか見当たらない。
 
 内田教授は、
 
「学校側としても助かる側面が大きいように思う」
 
 と話す。

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