目に涙を浮かべ思いを語った大沢樹生氏(撮影:上田耕司)
目に涙を浮かべ思いを語った大沢樹生氏(撮影:上田耕司)

 記者が「何かあったのですか?」「なぜ、大沢さんで一本化できなかったのか?」と聞くと、「区政のことにこれだけ国政選挙並みのマスコミ報道の方にいらっしゃっていただけるのは強みだと思います。(大沢氏が花川氏を応援することで)いい意味での効果を期待しています。花川区長が病気で倒れると、私の政策実現もかなわないので、本気で応援しようと思っています」と話した。

 それでも納得できない記者が辞退の理由を問うと、「年功序列です。自分も50歳を過ぎてからキックボクシングに挑戦したりやっていますので。まだ僕のほうが先があるので、花川区長にも自分が納得するまでトコトンやって下さいよという思いですね。花道を作ってくださいということですよ」と応じた。

 決断に至るまで、区内で活動していた。長く所属していたジャニーズ事務所ジャニー喜多川氏告発の件で揺れている。

「BBC が報道していたね。こっち(選挙)に集中していて、私のところには何も来ていません。辞めた後の方が長いですから、私も」

 そして、今後の芸能活動については、「区長選の立候補を辞めたから、じゃあ芸能界に戻って仕事をしようというそんな都合のいい世界ではない。ちょっと、しばらく開票まではこちらも自重して、それから自分の中で整理しながら考えて行きたい」と話し、妻について聞くと、感極まって目を赤くしながら、「今日もでかいおにぎりを2個作ってくれて、黙ってましたけど、陰で、オレの気持ちをくんでくれて、見守ってくれています」と語った。

 北区長選は4月16日告示、23日投開票で実施される。花川氏と、北区議の駒崎美紀氏(44)、自民党都議の山田加奈子氏(51)、飲食店経営の橋本弥寿子氏(70)の4氏の戦いとなるが、直前での立候補辞退について、大沢陣営の関係者はこう明かす。

「5万票が当落のボーダーラインになるでしょう。自公が推す山田氏が5万票を突破するのか、あるいは花川氏が5万票を突破するのかの実質一騎打ち。このままでは大沢は負けていた。だったら、花川氏に大沢の票を上乗せすれば5分の戦いになるのではないかと考えた」

 大沢氏は選挙期間中、花川氏の選対に入り、街頭演説などを一緒に回るという。

 会見終了後、87歳の現役区長は「昨日は野球をやってきた」とプレーをする動作を披露したが、報道陣は冷ややかに眺めているだけだった。その横で、大沢氏が「区長は昭和10年生まれで、私の父は昭和9年生まれ。一つ違いなので、父ちゃんという感じ」と言うと、会場から笑いが出た。

 花川氏は大沢氏らを残して一足先に会見場を後にした。(AERA dot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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