第47回木村伊兵衛写真賞を受賞した「新田樹」氏
第47回木村伊兵衛写真賞を受賞した「新田樹」氏

 第47回「木村伊兵衛写真賞」(主催・朝日新聞社、朝日新聞出版)が新田樹氏とその作品に決定しました。新田氏には賞状と賞牌(しょうはい)、副賞100万円が贈られます。

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 対象作は写真集「Sakhalin(サハリン)」(ミーシャズプレス)と、写真展「続サハリン」(ニコンサロン)。受賞作品展は4月28日から5月11日まで、ソニーイメージングギャラリー銀座(東京)で開催されます。

 新田氏は1967年福島県生まれ。東京工芸大学工学部卒業後、写真事務所を経て独立。日本の統治後、ソ連領になった後も帰郷することができないまま現在まで暮らす、韓国・朝鮮系、日本人の姿を丹念な取材で追いかけています。

 木村伊兵衛写真賞は、故木村伊兵衛氏の業績を記念し、1975年に創設。各年にすぐれた作品を発表した新人写真家を対象に表彰しています。受賞者は、写真関係者からアンケートによって推薦された候補者の中から、選考会によって決定されます。 

 第47回の同賞は、既に発表されたノミネート5人(王露氏、清水裕貴氏、新田樹氏、吉田亮人氏、吉田多麻希氏)の作品から選考委員4人(写真家・大西みつぐ氏、澤田知子氏、長島有里枝氏と小説家・平野啓一郎氏)による討議を重ねて確定しました。以下に、選考委員のことばを全文掲載します。

 ■10年越しのまなざし

 昨今、動画などをインスタレーションとして組み込んだ「展示」に重心を置いた作品もこの木村伊兵衛写真賞にいくつか推挙されてきている。それらに添付された展示資料などを頭の中で組み立て、作品として認識していくのは簡単ではない。肝心の写真イメージがそこに立った時のように続かないこともある。

「写真賞」であるがゆえに、選考させていただく側の一人としては、写真表現の新たな領域や場(空間)の成り立ちの美を問うだけにとどまらず、「写真」が世界に対して何を表現し、人間にいかに関わっていこうとしているのかを素朴に確かめてみたい。

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写真家・大西みつぐ氏のことばの続き