そして一定期間、親子ともに休みを取ることが大切です。4月からの新しい生活が始まるまでの期間を、充電時間にしましょう。その際に心がけることは、気持ちの持ち方です。受験に落ちてつらいから休むという現実逃避ではなく、4月から次の目標に向けてリベンジする、回復のための休みとポジティブに意識づけることです。あまりの悔しさから、結果発表の翌日には勉強を始めるという極端な行動をとる人もいますが、その無理は次第にストレスに変わってしまいます。休むことで、人はポジティブになれます。

 とくに旅行はおすすめです。場所が変わると、メンタルが好転することもあります。できるだけ自然に触れるとよいでしょう。都会のレジャースポットではなく、海や山などの大自然に飛び込むことで、人工物にはない脳に優しい線や形、たくさんの緑を目にして心の安らぎが得られます。

■親子で取り組む強さ

 前を向くには、親子が一緒に取り組むことがポイントになります。多くのご家庭を見てきましたが、朝ごはんをみんなで食べる家庭では、受験の局面でもメンタル不調を起こしにくい。週末に家族みんなでスポーツやキャンプに取り組むといったことでもよいでしょう。携帯やSNSで常に個々の時間を過ごしているよりも、家族のネットワークのなかにいることで、心が安定します。

 ときに、よい結果をつかめなかったわが子が腹立たしく、かわいく思えないという悩みも聞きます。ただそれは、根本的に子どもを嫌いになっているわけではなく、労力やお金をかけた分の空しさから起きる一時の感情です。また、受験期は親子関係が異常になっているケースも多いものです。わが子が勉強さえやって成績さえ上がればと、親はまるで子どもの家臣のように何でもやる。合格という結果が得られなかったうえにその関係性が続くと、親自身もさすがに子の態度に嫌気がさしてしまうわけです。

 こうした場合も、生活を見直すことが関係修復につながります。中学受験期は、勉強以外の要素をそぎ落とし、いわば健全な生活が壊れている状況ですから、リセットする必要があります。料理や掃除に一緒に取り組むといった親子の触れ合いから、愛情はまた深まっていくものです。

(AERA dot.編集部 市川綾子)