力作が並ぶ、マンガ部門と原作部門の最終候補作品(撮影/写真映像部・加藤夏子)
力作が並ぶ、マンガ部門と原作部門の最終候補作品(撮影/写真映像部・加藤夏子)

 朝日新聞出版とpixivがタッグを組み、“ホラーマンガ”と“ホラーマンガの原作”を募集した「朝日ホラーコミック大賞」の第2回目が開催された。作品の募集期間は2022年8月3日~10月31日で、ホラー漫画家・伊藤潤二さんを始めとする選考委員4名による最終選考会を経て、2部門の大賞と優秀賞が決定した。

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 第1回朝日ホラーコミック大賞に続き、第2回の選考委員長を務めたのは漫画家の伊藤潤二さん、選考委員に漫画家の波津彬子さん、「ほんとにあった怖い話(フジテレビ)」シリーズのプロデューサーである後藤博幸さん、東宝株式会社 映像本部 開発チームリーダーの馮年さんが務めた。

 最終候補となるには、応募作品の中から朝日新聞出版コミック編集部がふるいにかけた作品に残る必要がある。最終候補に残った作品を選考委員の4人がディスカッションを行い、各部門の受賞作を決定する。司会進行は、コミック編集部の畑中雄介編集長が務めた。 

 最終候補に残ったのは【マンガ部門】で14作品、【原作部門】で7作品。その中から、大賞と優秀賞が決定した。

■最終選考会への作品選びは、コミック編集部の部員たちが「〇△×」で審査

 第2回の応募総数は【マンガ部門】で175作品、【原作部門】で605作品だった。まず、編集長の畑中を中心に、「HONKOWA」「Nemuki+」をはじめ漫画雑誌・書籍を手掛けるコミック編集部の部員たちが、最終選考会の候補に残す作品の審査に入る。

 部員たちは、「○」「△」「×」の三段階で応募作品を評価していく。「○」の作品は即座に最終選考会進出が確定で「×」は落選。悩んだ作品に関しては“保留”という意味で「△」とし、作品について議論したという。最終選考会までの思いを、畑中編集長はこう話す。

畑中:まず、審査員として心がけていることは、物語の出だしが微妙だとしても、絶対に最後まで読み通すということです。最後まで読むことで、読み手を飽きさせない展開が用意されていることに気が付く可能性があったり、オチに「あっ!」と驚かせるものが仕組まれていたりする場合がまれにあります。まあ、最初が微妙な作品はやっぱり、読破したとしても微妙なことが多いですが。

Q:最終選考会として残す“選考基準ポイント”は何なのだろうか?

畑中:読み通して、物語として成立していれば第一関門はクリアです。支離滅裂である、読者が一読しても話の筋がわからないような作品である場合は、ここで落とします。大切なのは何人かの目を通して作品を読まないと、平均点がわからないということです。作品を読む編集部員は、好みや手掛ける作品の傾向もまったく異なるので、特に「△」が付いた作品の評価には注意しましたね。たとえば、今回大賞を受賞した「ストロベリーミルクゴースト」ですが、実は最初に目を通したときに4名のうち3名が「△」、1名が「×」との評価をしていました。そこで皆で議論し、改めて作品の評価を確認したところ、「〇」が1人「△」が3人と変わったのです。“結果として最終選考に残った作品”だったんです。

 絶対的な評価が不可能な創作の世界。人間が作品に順位をつけていく行為自体、課題は多々あるはずだ。コミック編集部としては、一つでも多くの名作が世に出る一助となるべく、今後も選考をより平等で説得力のあるものにしていきたいという。

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