4人の選考委員が互いに意見を出し合って選んでいく(撮影/写真映像部・加藤夏子)
4人の選考委員が互いに意見を出し合って選んでいく(撮影/写真映像部・加藤夏子)

■漫画化、映像化(ドラマ化)するにあたって大事なのは「構成力」

 さて、最終選考会の模様をお届けしよう。会場では選考委員の4人から、作品に対する忌憚なき意見が飛び交った。選考会を終えた4名に、審査のポイントや漫画と映像の違い、第3回朝日ホラーコミック大賞に期待することを聞いた。まずは、選考委員長の伊藤潤二先生と波津彬子先生の言葉だ。

伊藤:原作部門の選考は悩みましたね。突出したものがなかった気がしましたが、発想は面白いものが多かった。ただ、それを活かしきれていない作品が多いかなと感じました。

波津:原作に関しては、 この後にコミカライズされるということで、漫画にした時にどうかという観点で選考しました。応募作品の全体に言えることですが、最初の取っ掛かりや設定は面白いんですけれど、どうしても最後まで息が続かない、途中でくじけちゃう感じを作品から受けましたね。

Q:先生方は原作のテキストから漫画に表現する場合、どこを意識して描いたり、どこに目をつけて読みこんでいたりしますか?

波津:漫画化、映像化(ドラマ化)するにあたって大事なのは「構成力」です。作者の表現したいことを漫画家としてはきちんと受け取る必要があります。大賞を受賞した「ストロベリーミルクゴースト」は、キャラクターをどれだけ上手に立てられるか、そして伊藤先生が推していた「悪名轟かせ」は、その世界観をどう描くかで勝負が決まるところがあります。

伊藤:「20歳の自分へ」は面白かったですが、このままだと弱いなと感じました。タイムカプセルの話から始まるのですが、ちょっと手を加えたらもっと良くなる感じがしましたね。

波津:皆さん、推敲していないんだと思います。割と浮かんだものをぱっと書いて、それっきりなのではないかと。

伊藤:プロになると、編集さんの意見がありますしね。書いたばかりだと気づかなかったことが、時間をおくと見えてきたりもする。

波津:第三者の目を通すとどう見えるか。漫画に限らず、アマチュアの人は構成をまず考えない。話の面白さと、どういう絵が描けるかで作品を仕上げてきます。エピソードの順番を少し変えただけで、もっと面白くなる作品はいっぱいありました。

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