大差が付いても帝京の集中力は後半も落ちず、前半を上回る6トライを奪って計11トライ。SO高本幹也(4年、大阪桐蔭)はこのうち8本のコンバージョンゴールを決めて、71-5と完勝した。高本はゴールキックだけでなく、自ら持っての突破から前半の青木のトライに繋げたり、後半は小さいキックからロック本橋拓馬(2年、京都成章)のトライを生んだりとキーマンぶりを存分に発揮した。

 帝京は8トライを奪って50-0と圧勝した準々決勝の同志社大学(関西学生3位)戦に続く猛攻だった。選手個々のフィジカルが強く、スクラムで圧倒し、どこからでも、どういう形でもトライを奪える攻撃力は圧倒的。さらに、防御のレベルも高い。今大会の準々決勝、準決勝の2試合で許したトライはわずか1。対抗戦でも7試合で許したのはAグループの8校中唯一の1桁となる計8トライのみだ。

 対抗戦での対戦では、前半21-7、後半28-10と試合を通じて帝京が主導権を握っていた。セットプレーで優位に立ち、早稲田の厳しいディフェンスにもひるまない。後半30分から3トライを奪って一気に突き放している。

 今シーズンのここまでの戦い振りを見れば、決勝での帝京の優勢は否めない。チームも個々の選手の力量も大学ナンバー1だ。試合の見どころは、早稲田の修正能力と勝負強さがどこまで帝京に通じるかだ。対抗戦での早明戦では前半26分までに3連続トライを許し、21-35で敗れた明治大学に、3週間後の本大会準々決勝では27-21で競り勝っている。また、その前の3回戦では早明戦の1週間後という心身のコンディショニングが難しいタイミングながら、勢いがあった東洋大学(関東大学リーグ戦3位)に逆転勝ちしている。

 準決勝後の記者会見で帝京の相馬朋和監督は「対抗戦の時点でゲームをした相手(と同じ)だとは全く思っていません。全く違う早稲田大と決勝で当たるつもり」と話している。一方、早稲田の大田尾竜彦監督は対戦相手が決まる前の段階だったが、決勝に向けて「監督、コーチがこういうプランだったら勝ち切れるよね、というようなプランニングを組んで、それを選手が同じ絵を見て、選手たちがこれなら行ける、と信じる事ができるくらいの落とし込みが必要ではないか」と語った。

 早稲田が勝つための戦略、戦術を遂行するには、タックルやその直後のボール争奪戦であるブレイクダウンで、生身の選手1人ひとりのコンタクトで負けないことが大前提。ここで帝京の強さが上回るようなら、試合の流れは自ずと決まってくるだろう。