■100回大会で全国化したらどうなる?

 箱根駅伝は関東のローカル大会とは思えないほどの、大学にすればとんでもない影響力をもっている。ずいぶん前から、全国大会化を要望する声は各地から上がっていた。

 関東学連は、2024年の100回大会を迎えるにあたって、予選会参加資格を「関東学連」から「日本学生陸上競技連合」(日本学連)の登録者に広げると発表した。地方大学も予選会を通れば箱根に出場できる。

 また、第100回以降も全国化が検討されている。しかし、駅伝で関東とそれ以外の実力差はかなりの開きがある。2022年の全日本大学駅伝は15位までは関東の大学で占められている。全国各地の大学が予選会に参加しても1校も通過できす、結局、出場校は関東の大学だけ、ということも十分に考えられる。

 全国の大学が駅伝に強くなるためには、新たに1年から4年がそろう完成年度、つまり最低でも4年は要するのではないか。過渡期のあいだは、高校野球の「21世紀枠」のような特別枠を作り、駅伝で好タイムを出した大学が出場するというのはどうだろうか。

 正月、同時期に行われるスポーツの風物詩、大学ラグビーでは長い間、全国大学選手権優勝校は関東の大学、帝京大、明治大、早稲田大などに占められていた。

 こうしたなか、2020年度、天理大(奈良)は明治大、早稲田大に勝利して日本一になった。関西勢の全国制覇は1984年度の同志社大以来36年ぶりである。ラグビーも高校時代に花園で活躍した優れた選手が関東の強豪校に集まる傾向はある。だが、天理大の優勝は関西のラグビー好きな高校生を大いに勇気づけた。地元の大学で日本一をめざそうと。

 箱根駅伝もそうあってほしい。長距離走が得意な高校生が関東以外の大学に進む。それによって大学スポーツ選手のレベルが底上げされるのではないか。大学そのものも活気づいて元気になるのではないだろうか。

 箱根駅伝を全国大会へと軟着陸させ、強豪校が全国に分散されることを望みたい。

(文/教育ジャーナリスト・小林哲夫