今はきれいでアクロバティックなプロレス、華麗なプロレスが主流になってきているが、生で試合を見ると必死になっていい試合だとは俺も思うんだよ。でも、試合後に居酒屋に行ってまで語り合いたくなるほどの試合は少ないね……。昔は試合が終わった後も、どうだこうだと語っていたもんだけど。

 もし俺が今、現役で天龍プロジェクトでリングに上がっている佐藤耕平や矢野啓太といった選手としょっちゅう戦っていたとしたら、彼らも気持ちの入り方がずいぶん変わったと思うよ。憎しみとか恨みでね(笑)。でも、そういう気持ちを丸出しで戦っているレスラーは印象に残るもんだよ。古いと言われるかもしれないが、俺たちがやっていたプロレスは不器用で汗臭いけど、一味違った、秋田名物「いぶりがっこ」みたいな味だったのかもね。

 今のレスラーにも苦言みたいなことを言ってしまったが、俺がいない間も天龍プロジェクトのリングで戦ってくれているレスラー、それを見に来てくれているファンは本当にありがたいし、心強い。

 SWSが解散したとき「俺に騙されたと思ってついてきてくれ、引退したときは俺がみんなについていく」って言ったけど、今はついてきてくれた人たちに感謝している。俺は身を引くけど、あなたたちのことを見守っている、そんな気持ちだ! 天龍プロジェクトやイベントの会場でみんなが元気な姿を見せてくれるから、俺も頑張れる!リハビリをさっさと終えて、みなさんの前に出られるように頑張っているから、もう少しだけ待っててくれよ!

(構成・高橋ダイスケ)

天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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天龍源一郎

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天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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