桜蔭学園の正門。マンションは校舎の反対側にある(撮影/國府田英之)
桜蔭学園の正門。マンションは校舎の反対側にある(撮影/國府田英之)

「文教地区」として知られる東京・文京区本郷。この一角で、閑静な街並みを一変させるタワーマンションの建設計画が持ち上がり、近隣の学校や住民が困惑している。隣接しているのは“女子御三家”として名高い「桜蔭学園」。教室の窓側からわずか14メートル先に、校舎の高さをはるかに上回る巨大マンションがそびえたつことになる。生徒の過ごす環境にどんな影響が出そうなのか。実際に校舎を歩きながら、学園の理事長に話を聞いた。

【校舎のほとんどが影に?タワマン建設後のイメージ図はこちら】

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 都営三田線の水道橋駅から徒歩数分。大通りから細い路地に入り、坂道を上ったところに「桜蔭学園」はある。毎年、東京大学など難関大学に多くの卒業生を送り出す、屈指の名門女子校である。

 建て替え計画が進んでいる築40年超のマンションは、桜蔭学園の通学路である坂道に面しており、マンションの敷地は校舎と隣接している。マンションは地上8階(約33メートル)、地下1階で、1階には「宝生能楽堂」が入っている。

 これを地上20階、高さ69メートルのタワーマンションに建て替える計画が進んでいる。

 また、校舎に面した場所に能楽堂が建てられ、その屋上に「公開空地」と呼ばれる、誰もが出入りできる広場が作られる計画だ。

 建築主はマンションの管理組合。工事は2025年4月に着工し28年7月の完成を目指すとしている。

「マンションの建て替え自体に反対なのではありません。ただ、計画の内容はあまりに想像外で、頭が真っ白になりました」

 苦渋の表情でそう切り出したのは桜蔭学園の齊藤由紀子理事長(校長)。同学園の卒業生でもある。

 取材の際、実際に校舎の中に入り確認させてもらったが、当該のマンションは、校舎の教室の窓側に面している。都心部の学校とあって敷地は狭く、校舎の外に細い避難用通路があり、フェンスを隔てたすぐ先がマンションだ。

 現在は、マンションの住居の大半は校舎から少し離れているが、建て替え計画では、校舎のわずか14メートルの場所に移る形になる。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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