※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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親の介護をする生活になった友人や知り合いから、「突然介護になって、どうしていいやら」という話を聞いたことはありませんか。病院の手配、介護保険の手続き、介護のルーティンなど、多くの問題が一気にのしかかってくるといいます。聞いているほうも納得し、「突然そんな事態になって、たいへんですね」と同情します。しかし介護アドバイザーの高口光子氏は、「その言葉、おかしくないですか」と疑問を投げかけます。親が老いていくのは必然で、それまでに気づくタイミングはあったはず。子どもの側の準備不足が「突然」と感じさせるのだといいます。

【教えてくれたのは】介護アドバイザーの高口光子氏

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■親は急に70歳から80歳になったわけではない

 介護の現場では、親の介護をしている家族から「急に介護になってたいへんなんです」という訴えをよく聞きます。私はそのたびに、ちょっとした違和感を抱きます。そして疑問に思います、「なぜ、“急に”介護になった」という言葉が出てくるのだろう、と。

 先日も、60代前半の女性からこんな相談を受けました。女性の母親は、突然、脳梗塞(こうそく)で倒れました。救急搬送されて一命をとりとめましたが、後遺症でからだが不自由に。「命が助かったからよかった」とほっとした矢先、病院から「もう退院していただかなくてはなりません」と言われ、女性の頭のなかには、「え、このあとの介護は私がするの?」「いっしょに暮らすなんて無理!」などの思いが渦巻いたといいます。そして私に訴えました。「突然、そんなこと言われて、私はいったい、どうすればいいんでしょうか」。

元気がでる介護研究所代表の高口光子
元気がでる介護研究所代表の高口光子

 脳梗塞自体は、確かに突然の出来事かもしれません。しかし、なにかしらの病気やケガで要介護になるのは、年老いていけば誰にでも起こりうることです。親は70歳から急に80歳になるわけではありません。毎年一つずつ年を取って、日々、相応の衰え方をしているのです。「急に」介護生活になったと感じるのは、あなたが親の老いに気づいてあげられなかった、あるいは認めたくなかっただけではないでしょうか。親が老いることについて、あなたの準備が足りなかったゆえの感覚ではないでしょうか。

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高口光子

高口光子

高知医療学院卒業。理学療法士として病院勤務ののち、特別養護老人ホームに介護職として勤務。2002年から医療法人財団百葉の会で法人事務局企画教育推進室室長、生活リハビリ推進室室長を務めるとともに、介護アドバイザーとして活動。介護老人保健施設・鶴舞乃城、星のしずくの立ち上げに参加。22年、理想の介護の追求と実現を考える「髙口光子の元気がでる介護研究所」を設立。介護アドバイザー、理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。『介護施設で死ぬということ』『認知症介護びっくり日記』『リーダーのためのケア技術論』『介護の毒(ドク)はコドク(孤独)です。』など著書多数。https://genki-kaigo.net/ (元気がでる介護研究所)

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なぜ、準備不足が起こるのか?