先住のミュウと千夏の出会いを描いた漫画の一コマ(提供)
先住のミュウと千夏の出会いを描いた漫画の一コマ(提供)
きょうだいのように仲良しになりました(提供)
きょうだいのように仲良しになりました(提供)

 千夏が3歳くらいの時、日本の企業で働きたいと思い、ミュウと一緒に日本に連れて帰りました。私の実家は中部地方の自然豊かなところにあるので、遊び盛りの千夏は目の前の田んぼを走り回ったり、庭の木によじ登ったりして自由に過ごしました。

 7年ほど日本で過ごしたのですが、私の中でまたニューヨークに住みたいという思いが膨らみ、インターンプログラムでニューヨークに戻ることにしたのです。

 その時、両親がさみしがったので、親になついていたミュウを日本に残し、千夏だけ連れていくことにしました。2011年2月、千夏が10歳になる前でした。

■「薬で眠らせますか?」日本との違いに愕然

 千夏は毎年、健康診断を受けていましたが、ずっと健康でした。13歳の頃に甲状腺と腎臓の数値が少し悪くなり「(老には)ありがちなことです」といわれ、薬を飲みはじめましたが、そのほかの症状はとくにあらわれず、穏やかな日を過ごしていました。

 ところが2018年12月31日、とつぜん千夏が飲み水の入った自分のコップを倒したのです。何度も倒し、飲むことができません。ごはんもその日から食べなくなりました。

 妹に連絡をすると、「それはまずい。猫はごはんを食べないとすぐに内臓が悪くなると聞いたことがある」といわれ、お正月早々、動物病院に駆け込みました。

 検査の結果、極度の脱水症状で、尿毒症、肝機能低下がみられ、黄疸の数値も上昇して一気に危険な状況になっていました。そして獣医さんが発した言葉に、息をのみました。

「もって3~4日でしょう。薬で眠らせることもできます。どうしますか?」

 眠らせるって? 実家にいた猫たちは20歳くらいまで生きて、老衰で虹の橋を渡っていたので、そんなことを言われるのは初めて。

無理はさせたくない、でも助けたい……(提供)
無理はさせたくない、でも助けたい……(提供)

 後からわかったことですが、アメリカでは、ペットの予後がよくなく、十分な治療や心地よい実りある生活を飼い主がそれ以上与えられないと思われる場合、“早い段階”で安楽死を勧める傾向にあるようです。双方の苦痛を取り除くためで、合理的ともいえるのでしょうが、私は安楽死なんて考えられませんでした。

 その日から1週間、ずっと泣いていたように思います。

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2カ月経ったある朝……号泣です!