「人を弔う気持ちというのは自由です。それなのに、国葬という形で強制しようとしている。『半旗を掲げよ』とか『黙祷しろ』とかいう意見もある。いくら地方自治体の職員であっても、そんなことをさせてはダメ。それが教育の現場に持ち込まれたらもっとダメ。私たちは中野区長と教育長に対して、『弔意の強要は絶対にしないでください』という要望書を出してきました」(松井さん)

 国葬に16億6000万円の費用を使うということに関しては、

「新型コロナの影響や異常気象で水害に苦しむ人もいる。これからどうやって生活を立て直すのかというところなのに、国葬にそんなお金をつぎ込んでいいんですか。税金の使い道を間違っていませんか。アベノミクスで日本沈没なのに、なおさらこれですからね」

 と、松井さんの怒りはおさまらない。 

「安保法制の廃止をめざす中野アピール実行委員会」(撮影/上田耕司)
「安保法制の廃止をめざす中野アピール実行委員会」(撮影/上田耕司)

「日本に民主主義が根付かない」

 冒頭の浦和駅前の集会に参加していた国学院大名誉教授の菅井益郎氏(日本公害史)は、ダンボールを切って「国葬反対」と書いた紙を貼り付け、手に持ってデモ行進していた。

「選挙に行って投票することだけが、政治行動ではありません。私は『デモを日常化せよ』と主張しています。そのくらいしないと日本に民主主義が根付かない」

 菅井名誉教授は、今月19日の代々木公園から出発した1万3千人規模のデモ行動にも参加した。

「私は欧米の市民運動のデモにも参加しましたが、もっとたくさんの市民が道一杯に広がってデモしています。日本ではデモ規制が厳しすぎる。デモをしないと日本の政治は変わりませんよ。反対する声をもっと上げて、さあどうするんだ、こっちは見てるぞ、ということを示さなきゃいけないと思っています」

(AERA dot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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