インタビューも、前の晩に都内で採集したという昆虫たちとともに。そのうちの1匹「ヤブキリ」を手に(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
インタビューも、前の晩に都内で採集したという昆虫たちとともに。そのうちの1匹「ヤブキリ」を手に(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)

――昆虫への熱が薄れることはなかったんでしょうか。

 教育熱心だった母親の勧めもあって、中学受験をしたんですが、進学した中高一貫の男子校は自分の好きなことに没頭できる環境で、ますます昆虫熱が高まりました。勉強はそっちのけで、夏になると石垣島などに一人で行き、自転車で島中をまわって虫捕りをしているような少年でした。ただ採集するだけでなく、標本を作ったり、昆虫への知識を深めたりと活動の幅も広がりました。

――新たな知識はどのように得ていたのですか。

 知りたい昆虫はほとんど図鑑に載っていなかったので、専門書に手を伸ばしていました。専門書にも書かれていなければ、著者の研究者に連絡をとって質問をすることもありました。中学2,3年生の頃には英語の研究論文を探し集めて、読んでいました。そのおかげで、いつの間にか英語力も上がっていました。それでもわからない場合は、自分で虫を捕って観察したり解剖したりすればいいんだと。僕が昆虫ハンターであり続ける理由です。

――臆することなく知りたいことを明らかにする姿勢は、まさに今の時代に求められている「探究力」ですね。

 とにかく「昆虫を知りたい」という思いを満たすために動いていました。高校生の時には日本昆虫学会と日本甲虫学会に所属して、研究発表をしていました。大人に混じって活動をするわけなんですが、珍しい虫を持っていくと、虫好きのおじさんが血眼になって、交換してほしいと声をかけてくるなんてこともありました。

(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)
(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃)

――その後の進路も、昆虫ありきで決めたのでしょうか。

 高校1年生のとき、進路を提出するギリギリのタイミングで北海道大学のオープンキャンパスを見つけたんです。正直なところ、北海道で虫捕りをしてみたい、という一心で参加しました。大学の説明会は早々に切り上げて、いざ虫捕りへ。実はその時期に、ちょうど木の伐採が行われていて、倒れた木に珍しいカミキリムシが沢山集まっていたんです。その様子を見た僕は、北海道にはこんなに虫がいるのか!と大興奮して、北大志願を即決しました。それでも、受験生らしからぬ、親の目を盗んで虫捕りに出かけて怒られたこともありましたが、なんと2次試験の生物でクワガタに関する問題が出たこともあり、ご縁をいただけたんです。

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虫捕りという人生の一本柱