パルこどもクリニック院長 友政剛医師
パルこどもクリニック院長 友政剛医師

 夏の便秘の予防策としてはまず、適度な水分補給が大事です。とくに夏は汗で体内の水分が不足しやすいので、こまめに補給させてあげましょう。余分な水分は尿となって出てしまうので、たくさん飲ませればいいというわけではありません。むしろ気をつけてあげたいのは就寝中とのこと。

「寝ている間は水分を取れないため、脱水が進みやすいタイミングです。子どもは新陳代謝が活発で、大人に比べて体温が高いもの。大人は快適でも、子どもにとっては暑いということがよくあります。子どもが寝汗をかいているなら、汗をかかなくなるくらいまでエアコンを調整してあげることが大事です」

■トイレトレーニングは子どもの様子を見て進めて

 もう一つ気をつけたいのが、トイレトレーニングの進め方です。オムツを外してトイレやおまるで排尿・排便できるように練習をするこの時期に、便秘になる子どもが多いことがわかっています。

「オムツの中に便を出すのと違って、トイレトレーニングは見られているという緊張もあり、リラックスして排便しにくいようです。トレーニングを始めたら便秘がちになった、といったことがあれば、いったんオムツに戻してあげましょう。オムツで排便がスムーズにできるようになったらトレーニングを再開するというように、子どもに合わせて進めるのがポイントです」

■生まれつきの体質が便の硬さに影響する

 便秘にいいといわれる食物繊維などは、積極的に取ったほうがいいのでしょうか。友政医師は「大人と違って、子どもの場合、食事療法の明らかな効果が立証されているとは言えません」としたうえで、こう話します。

「一方で、食物繊維は効果がないという証拠もありません。栄養バランスの観点からも、食物繊維を含むバランスのいい食事は大事です。ただ、やわらかいものが多い現代の食事メニューから、たっぷりの食物繊維を取るのは大人も難しいですよね。食物繊維が多い豆類や海藻、根菜などは苦手な子どもも多いので、無理に食べさせようとすると、親子ともにストレスになってしまいます」

 便の硬さは生まれつきの体質の影響があり、腸の水分調節機能には個人差があります。子どもの便秘も生まれつきの体質が大きな要因になるので、水分や食物繊維を取っても便が硬くなりやすい子どもがいるそう。「親御さんは水分摂取や食事に、あまり神経質にならなくていいですよ」と友政医師はアドバイスします。

■便秘は医師が治療するべき「病気」

 生活の見直しと家庭でのケアだけで治すのは難しいことが多いため、早い段階で医療機関に相談することが大事です。

「市販の下剤は基本的に大人用で、主流である『アントラキノン系下剤』は腹痛などの副作用があります。子どもに使えると書かれた薬もありますが、量の調整は難しい。昔はよく使われていたかん腸も乱用はNGです。肛門に刺激を与えることで子どものトラウマがより悪化しやすく、まずはかん腸が不要なように飲み薬できちんとコントロールすることが大切です」

 子どもの便秘の治療は大人とは違った留意点があり、専用の診療ガイドラインが発行されています。便秘は専門の医師の治療が必要な「病気」なのです。後編では、医療機関での治療について、ひもといていきます。

後編はこちら→【子どもの便秘】家庭でケアは難しいことが多い。慢性化を防ぐには早期の治療が大切

(取材・文/狩生聖子)