球界を代表するスーパースターの中にも「外れ外れ1位」で指名された選手たちがいる。代表格がヤクルト・山田哲人だ。履正社高で走攻守3拍子揃った内野手としてプロの評価が高かったが、10年ドラフトの目玉は斎藤佑樹(元日本ハム)、大石達也(現西武2軍投手コーチ)、福井優也(現楽天)の「早大三羽ガラス」だった。ヤクルトは4球団が競合した斎藤を1位で指名したが抽選で外し、八戸大・塩見貴洋(現楽天)を外れ1位で指名したが再び抽選で外す。「外れ外れ1位」で指名したのが山田だった。その後の活躍は言うまでもないだろう。トリプルスリーを前人未到の3度達成するなど球史に名を残す選手に。侍ジャパンでも昨夏の東京五輪の金メダル獲得に貢献するなど国際舞台で強さを発揮している。

「山田はヤクルトに入りたかったので、相思相愛の形になってよかったと思います。性格的にもガチガチに縛られるのが嫌なので、伝統を重視する球団より伸び伸びとしたチームカラーのヤクルトが合っていたと思います」(スポーツ紙記者)

 阪神の中心選手として活躍する近本光司も18年ドラフトに「外れ外れ1位」で入団している。この年は大阪桐蔭の根尾昂(現中日)、報徳学園の小園海斗(現広島)に4球団、大阪桐蔭の藤原恭大(現ロッテ)に3球団が競合。阪神は藤原を抽選で外し、外れ1位で指名した立命館大・辰己涼介(現楽天)にも4球団が競合して抽選を外す。外れ外れ1位で指名したのが近本だった。

 アマチュア野球の担当記者は「近本は社会人№1外野手でしたが、肩が強くないのがネックでした。身長も171センチと小柄で打撃がプロで通用するのかも未知数だった。失礼ですがまさかあそこまでの選手になるとは…」と驚きを口にする。1年目にセ・リーグ新人記録の159安打をマークし、新人から2年連続盗塁王を獲得。昨年は打率.313、10本塁打、50打点、24盗塁をマーク。自身初の最多安打(178)のタイトルを獲得した。

 ちなみに、近本が指名された18年ドラフトの「外れ外れ1位」でヤクルトの清水昇、巨人の高橋優貴、ソフトバンクの甲斐野央が入団している。一口にドラフト1位と言っても、さまざまなドラマが繰り広げられているのが興味深い。(梅宮昌宗)