谷中生姜は口当たりがさっぱりして、ビールで流し込むのがいいんだ。以前、銀座の寿司屋で谷中生姜を20本くらいおかわりして怒られたこともあったほどだ(苦笑)。今でも夏は谷中生姜とビールだね。

 もう一つ、利尻昆布を水につけておいて塩と味の素を入れて、そこにぶつ切りにした鮑をぶっこんで、しばらく冷しておいた「水鮑」が俺の好物だ。鮑がダシを吸って、ちょうどいい塩加減がうまいんだ。これは、俺の寿司店で出していた「鯛そうめん」と同じく、二所ノ関部屋の先輩力士、大文字関のレシピなんだ。大文字さんがどこからかシャレたものを見つけてきて、自分で作って食べていたんだけど、その余ったのをもらったらすごくおいしくてね。それで結婚してから、女房に作り方を教えて作ってもらうようになった。女房が作っても十分おいしかったし、大文字関は食道楽で、食べ物には口うるさい人だから、この水鮑は誰が作っても間違いないよ。

 それと、相撲取りはみんな夏になると、ニンニクを炒めて味噌と砂糖入れたニンニク味噌を食べたり、昆布に鶏の皮とニンニク、ショウガを入れて、醤油で炊き込んで、それでお茶漬けにする昆布茶漬けをよく食べるもんなんだ。部屋ごとにレシピがあって、それぞれ味に特徴があるんだ。この2つも夏の思い出深い食べ物だね。ただ、最近は食べてないなぁ。だって、今はニンニクを食べ過ぎると元気が出すぎちゃって余計に夜眠れなくなっちゃうからね。夏バテは大丈夫だけど、夜に眠れないのは困ったもんだ……。ああ、カシアス・クレイにアッパーカットを一発食らって、ぐっすり眠りたい気分だよ(笑)。

(構成・高橋ダイスケ)

天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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天龍源一郎

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天龍源一郎(てんりゅう・げんいちろう)/1950年、福井県生まれ。「ミスター・プロレス」の異名をとる。63年、13歳で大相撲の二所ノ関部屋入門後、天龍の四股名で16場所在位。76年10月にプロレスに転向、全日本プロレスに入団。90年に新団体SWSに移籍、92年にはWARを旗揚げ。2010年に「天龍プロジェクト」を発足。2015年11月15日、両国国技館での引退試合をもってマット生活に幕を下ろす。

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