胃粘膜に潜り込んでいるアニサキス
胃粘膜に潜り込んでいるアニサキス

 港区のある居酒屋の店主も、養殖と天然との違いについてこう話す。

「天然ものになると “アニ”(アニサキス)の確率はどうしても高くなる。お客さんに安心なものを出すのは絶対だけれど、100%完全に防ぐとなれば、養殖の魚だけにするしかない。そうなると魚の種類はかなり狭められてしまう」

 この店の刺し身などは、「できるだけ鮮度の良い天然の魚」(店主)を使っているため、チェーン店の居酒屋などと比べると値段もお高めだ。そのため、アニサキスの処理は必ず必要になるという。

「それぞれのお店のやり方や、板前さんたちの包丁さばきなどで違いは出てくる。イカは飾り包丁にするとか、身を薄く切るとか。うちでも、とにかくよく確認しながら出すようにしている」(前出の居酒屋店主)

 飾り包丁だったり、薄く切ったりするのは、アニサキスは切断されたり、大きく傷ついたりすると死ぬためだ。

「冷凍にすればいいとはいえ、新鮮さを考えると、すべて冷凍処理した魚を出すのもね……。そうなると高級店と呼ばれるようなお寿司屋さんは成り立たなくなる。あとはお客さんの考え方だよね」(同)

 城戸教授が言う。

「食に対する考え方は、国ではなく、文化や個人が決めること。僕は、アニサキスにあたるリスクが多少あっても、おいしいお刺し身を食べたいです」

 ちなみに、城戸教授は一度もアニサキスに当たったことはないとのこと。

 (AERA dot.編集部・岩下明日香)

※厚労省のホームページ「アニサキスによる食中毒を予防しましょう

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