「ほれみろ、正夢になっちまったぞ。どうするんだ。4匹なんて、飼えねぇぞ」

 そう母がいったので一度は諦めたのですが、数日後、表でチョンまねと子に会い、ふびんさからかつお節ご飯をやると、チョンまねは一息に食べた後に吐きだして、その吐瀉(しゃ)物を子猫が食べて……私はそれを見て涙と鼻水でぐじゃぐじゃになり、「いいよ、うちの子になりな」と声をかけました。

 そうして4匹を迎えたのですが、誰かに分けず一斉に引き受けたのは、私自身、家族に縁が薄い人生を送ってきたからかもしれません。

 私が7歳の時に祖母が亡くなり、8歳の時に父が土砂崩れで亡くなりました。11歳の時には年の離れた異母姉が結婚して家を出て……。小学校入学時には5人家族だったのに、卒業時には母とふたりだけに。そんなこともあり、この猫家族は離れ離れにさせたくない、一緒にいて欲しいなと思いました。

チョンまね(左)と、母と椅子の取りあいをしたタマ
チョンまね(左)と、母と椅子の取りあいをしたタマ



■猫と母が繰り広げた椅子争奪戦

 猫のキャラはそれぞれでした。賢くて焼きもちやきのチョンまね。母親似で賢いけど人見知りのメメ、抜けているけどずるい面もあるタマ。さらに抜けてて、ちょっかいを出しては雌たちから煙たがられるチャッペー。

 とくに、タマと母の関係は愉快でした。

 タマは母におなかをなでてもらうのが好きで、横になって「なでて~」と鳴くと、母が右手で「タマの古おっぱいはどこだ」と5分近くなで回しました。タマは子育てをしていないので、「古おっぱいじゃないよ!」と私がツッコミを入れたんですが(笑)。タマは母がなでた後もしばらく恍惚(こうこつ)の表情を浮かべていたのだけど、私がなでるのと何が違ったのかな。

 母は倒れて以来、家の廊下でリハビリ(歩行訓練)を続けていて、廊下に休憩用の椅子を置いていました。なぜかリハビリを始めるとタマがその椅子に座りたがり、争奪戦を繰り返しました。母が廊下の椅子の前に立つと、タマは一目散に居間から駆けていき、椅子に寝転ぶ。その間わずか3秒! 動作の遅い母は毎回、椅子取りに負けるのです。

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裏口からのんきにスズメをくわえて