※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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 働きながら大学院で学ぶ人たちは、どのように仕事と研究を両立させているのだろうか。大学院も平日夜や土曜開講、オンライン授業などで社会人が学びやすい環境を整えている。好評発売中の『大学院・通信制大学2023』では、実際に大学院へ通っている社会人と、積極的に社会人大学院生を受け入れている大学院の取り組みを取材した。

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 筑波大学大学院で会社法を研究する下村侑子さん(26歳)は大学卒業後、都内の印刷会社に就職して5年目になる。入社3年目に博士前期課程に進学し、現在2年目を迎え、社会人と研究者の一人二役をこなす日が続く。

■法律を体系的に学び直して成長しながら仕事に生かす

 同社は株式上場申請や株主総会の招集通知、金融商品取引法や投資信託法などの書類に関するサービスを提供している。下村さんは招集通知文書の業務で関連法規の会社法に興味を持った。

「仕事では会社法の一部にしか触れる機会がなく、もっと幅広い知識が必要ではと感じていました。上司に相談したところ、部署でも応援するから大学院に通ってみてはと勧められて、大変かもしれないけれどせっかくのチャンスだと思い挑戦しました」

 会社としても社員を大学院に通わせるのは初めてのことだった。受験準備を始めたのが願書提出締切の1カ月前で時間がなく、業務時間中に研究計画書を作成し、会社の顧問弁護士からもアドバイスを受けて入試に臨んだ。

「面接試験では株主総会の招集通知で、実務経験で感じていた情報開示の問題点を話すと、面接官の先生に共感していただいて話が盛り上がりました。緊張することなくむしろ楽しい時間でした」(下村さん)

 2021年4月に法学学位プログラム博士前期課程の大学院生となった下村さんは、午前中を授業の準備やレポートの作成にあて、昼の12時半に出社。夕方18時20分まで仕事をしてから大学院のリモート講義を受けた。

「1年次の授業はほとんどがオンラインで、金融商品取引法演習のゼミは私の希望で対面にしてもらいました。社会人経験の長い人と一緒でレベルの違いに苦労しましたが、いろいろ教えてもいただいて、大学院での学びを実感しました」(同)

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2年次には朝9時からの通常勤務に