「カジサック」ことキングコングの梶原雄太
「カジサック」ことキングコングの梶原雄太

「カジサック」ことキングコングの梶原雄太は、6月15日に公開したYouTube動画の中で、体調不良のために活動休止することを発表した。また、2021年の『キングオブコント』で優勝した空気階段の鈴木もぐらも、股関節の手術のために10月頃に1カ月ほど活動休止することを明かしている。

 芸能人が体調不良のために休養することに関しては、事務所側も寛容になっているし、世間の人にも受け入れられている。その背景には新型コロナ流行の影響もあるだろう。今では一般企業や学校でも、少しでも発熱があったり、体調が悪いときには万が一に備えて無理をせずに休む、というのが一般的になっている。

 コロナ禍のテレビでは、出演者の数が大幅に減らされたり、番組の顔であるはずのMCが陽性になって別のタレントが代役を務める、といった光景がしばしば見受けられた。そのような状況が続くことで、出演者側の心境にも変化があったかもしれない。

 テレビタレントは、限られた出演枠を争って日々戦っている存在だ。たとえ思い込みであっても、「自分がここに出ているのは意味があることだ」「この仕事ができるのは自分しかいない」といった自信のようなものが、これまでは彼らを支えていた。

 しかし、コロナ禍によってそれが崩れた。「自分がいなくなっても代わりはいる」という現実が突きつけられた。頭ではわかっていたことなのかもしれないが、その状況が目の前に現れたことで、否応なしに実感せざるを得なくなった。

 それは、彼らにとって必ずしも悪いことではない。そもそも、多くの人の目線にさらされる過酷な現場に当たり前のように出続けていることの方が異常だったのだ。

 芸人のような仕事は特に「好きでやっているんだから休みなんてなくてもいいでしょう」というふうに思われがちだ。しかし、仕事である限り、休みは必要である。テレビ業界で働くスタッフの労働環境は、ここ数年で劇的に改善されたと言われている。芸能人の働き方も一歩遅れて徐々に変わりつつあるし、変わるべきだと思う。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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