国内外の広告クリエイティブを分析してきた河尻亨一氏
国内外の広告クリエイティブを分析してきた河尻亨一氏

三浦:拾ったもので生活をつくると、用途を変更せざるを得ないんです。みかん箱だけどタオルを入れたりだとか、陶器の箱だけどCDボックスにちょうどいいとか。そんなふうに用途を変えて使うのがいいと思ってる。

 隈研吾さんとの『三低主義』でも書いたように、「拾う」「もらう」「借りる」はこれからの暮らしの基本だと思うんだけど、無印の商品って用途が変えられないし、中古になったら魅力が減りますから。

 これはリノベーションにも言えることですが、無印良品もパタン化してしまったんですよね。すると、リノベした家に住むより、1970年代のダサい部屋にそのまま住むほうがかえって潔いというか、カッコいいという言い方ができる時代になっている。

■『クウネル』はなぜリニューアルしたのか? 消費の2015年問題を考える

河尻:ちょっと話が大きくなってきたので、ここで一度整理しつつ、次に進めます。2000年代は「第四の消費」と呼んでいる時代の勃興期で、10年代になるとそのムーブメントが深化します。その代表格が「シェアリングエコノミー」でしょうね。三浦さんが『これからの日本のために「シェア」の話をしよう』をリリースしたのが11年で、翌年にその名もズバリ『第四の消費ーーつながりを生み出す社会へ』が出版されます。

 当時は東日本大震災の影響やSNSの普及などもあり、社会的につながり志向が顕在化、シェアハウスやシェアオフィスが脚光を浴び、さまざまな共創型プロジェクトが盛んに行われるようになりました。

 ところが、2015年頃を境にそのムーブメントが急速にしぼんだというか、「第四の消費」は変質していった印象もあり、後半はそのあたりの話をしてみたいです。この動きは今後どうなるのか。パンデミック後も視野に入れつつ展望を話しあってみたいと。

三浦:その変化を象徴するのはメルカリですね。つまり、フリマのデジタル化。メルカリが広く認知され始めたのも15年ぐらいだと思いますが(創業は13年)、こうなってくると自分らしさを表現するフリマではなく、単にいらないものを売る便利ツールになってしまっている。

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「ファストていねいな暮らし」というスタイル