自分の親が高齢になり、脳卒中などの後遺症でからだが不自由になったら、有料老人ホームなどの高齢者ホームに入居してもらいますか? 親の高齢者ホームへの入居を決めるのは、ほとんどが子ども世代という現状があり、家族ならではの決定の難しさがあるようです。介護コンサルタントで、『介護施設で死ぬということ』などの著書がある高口光子氏にお話をうかがいました。
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■介護の日々は突然やってくる
親が脳卒中で突然倒れた。急いで病院に駆けつけると、幸い、命はとりとめたが、後遺症で左半身が不随に。急性期病院、リハビリ病院を経て、退院して自宅に戻ってくる。そのとき、ようやく気づきます。退院しても“もとの親”で戻ってくるわけではない。自立した立派な親ではなく、自分たちが守ってあげないといけない存在になっている。あるいは認知症を発症した場合には、進行してさまざまな症状が表れ、言動がまるで別人になっていってしまう……。
それまで介護とは縁がなく、介護についてほとんど知らない子ども世代にとって、まさしく青天の霹靂(へきれき)。介護って、自宅でするの? 誰がするの? 高齢者ホームに預けられるの?といった疑問に直面することでしょう。
高齢の親がいれば、いずれはそのような事態に陥るとは頭ではわかっていても、そうなったときの対策を具体的に考える人はあまり多くないようです。多忙な生活に取り紛れて、前向きに考える余裕がないというのが本当のところでしょう。
■在宅介護は無理と判断はするが……
いまでは親と別居することはごく普通のこと。子どもをもつ高齢者世帯の約半数が、子どもと別居しているといいます。子どもには子どもの生活があります。40代50代は仕事で責任ある職務を任され、まだ家のローンも残り、子どもも教育途中、気持ちも経済的にも余裕がありません。60代ではようやく一息つけて第二の人生設計の真っ最中ですが、まだまだ働かないと経済的に安心できず、さらに自分たちの老後の心配が頭をもたげて、やはり余裕がありません。いきなり在宅で介護しろといわれても、対応できない場合が大多数ではないでしょうか。