タブレットを使う小学生(画像の一部は加工しています)
タブレットを使う小学生(画像の一部は加工しています)

 コロナ禍の自粛生活でタブレットやスマホの利用が進んだ一方で、子どもを育てる親からは視力低下に関する不安の声が上がっている。国内外の調査結果を調べると、子どもたちの視力が低下している現状が浮かび上がる。専門家によると「将来的な失明リスクがある」という。

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「子どもの目が悪くなっているかも」

 こう話すのは東京都に住む38歳の女性だ。3歳の男の子がいるが、保育園に入ることができず、企業の託児サービスを利用している。子どもを連れた通勤中に役に立つのがスマホだ。混んでいる電車の中で子どもを静かにさせておくのに役に立つ。だが、片道15分とはいえ、近い距離で小さな画面を見つめている姿に不安がよぎる。

「1歳のときから目に悪い環境にいるなと感じています。コロナで最初の緊急事態宣言が出たときは、在宅ワークをしている中で、テレビに助けてもらいました。罪悪感を覚えながらも、仕方がないと思っていましたね。外に出る機会もかなり減っていますし、子どもの視力が今後どうなっていくか本当に心配です」

 実際、このコロナ禍で子どもたちの視力低下している。

 北海道教育委員会が21年7月から9月にかけて行った「公立学校児童等の健康状態に関する調査」によると、幼稚園では視力1・0未満の子どもが35・82%で、前回17年度の調査から14・7ポイント悪化。小学校では36・47%で前回より3・32ポイントの悪化、中学校では53・83%で9・9ポイントの悪化、高等学校では67・35%で7・19%の悪化となっている。

 中国肥城市で6歳から13歳の約12万人を対象に、20年6月に視力について調べた調査がある。中国では20年1月末にコロナ対策で学校が閉鎖。インターネットによる授業に切り替えられたという。調査結果を見ると、6歳から8歳の層で、近視が進行し、近視の有病率が高まっていた。コロナ以前で6歳の有病率が5・7%だったのが20年は21・5%に、7歳が16・2%が26・2%に、8歳は27・7%が37・2%と悪化した(下表)。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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