こうした結果に対して、小田原市立病院眼科の栗原大智医師はこう説明する。

「中国の調査結果は、成長が進む年少の間に近視が特に進行する可能性があることを示しています。コロナ禍で視力が悪くなっている要因は、自宅で過ごす時間が増え、スマホやタブレットなどのポータブル機器を使う機会が増えたためです。子どもの子守りや勉強に非常に便利な反面、近くにピントを合わせる機会も多くなりました。また、外出する機会が減り、外で遊ぶ時間が減りました。これらにより近視が進む要因になってしまいます」

 目が悪くなれば日常生活や学校での生活で不便を感じるようになることになるのは当然だが、さらに怖いのは将来的な目の病気だ。

 近視が強くなると緑内障や網膜剥離、近視性黄斑変性といった失明につながる病気を患うリスクが高くなってくる。強度近視になると、近視ではない人と比べ、緑内症で3・3倍、網膜剥離で21・5倍という報告もある(上表)。

「若いうちは失明するリスクは低いですが、近視が進行していると40代を超えたくらいに緑内障などの病気を発症し、失明するリスクも出てきます。こうしたリスクを避けるためにも、子どもの近視を放置せずに、若いうちから近視の進行を抑えることが重要になってきます」(栗原医師)

 コロナ禍で子どもたちの目が脅かされていることを、親や周りの大人が強く意識する必要があると言えそうだ。基本的な対策から最新の治療法を押さえておこう。

>>記事「子どもの視力、『太陽光』に近視進行抑制効果 海外で認められた3つの治療法を専門医が解説」 

(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら