国立感染症研究所=東京都新宿区
国立感染症研究所=東京都新宿区

 国立感染症研究所(感染研)が、新型コロナの主な感染経路として、「エアロゾル感染」(空気感染)があると明記したことが波紋を呼んでいる。これまで感染研は「飛沫感染」と「接触感染」を主な感染経路として説明し、飲食店などでもその認識に基づいた対策を行ってきた。しかし、アメリカなどでは昨年から「空気感染」を主な感染経路として認め、換気などの対策に重点を移してきている。コロナ対策は今後どう変わるのか。

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  3月28日、国立感染症研究所のホームページに「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染経路について」と題した記事が公表された。そこにあったのは、次の説明だ。

<(感染の)経路は主に3つあり、(1)空中に浮遊するウイルスを含むエアロゾルを吸い込むこと(エアロゾル感染)、(2)ウイルスを含む飛沫が口、鼻、目などの露出した粘膜に付着すること(飛沫感染)、(3)ウイルスを含む飛沫を直接触ったか、ウイルスが付着したものの表面を触った手指で露出した粘膜を触ること(接触感染)、である>

 いま専門家らの間で「なぜ今まで明記しなかったのか理解に苦しむ」とまで言われているのが、(1)のエアロゾル感染について。感染研はこれまで主な感染経路として「飛沫感染」と「接触感染」を挙げていた。それは2022年1月に感染研のホームページで公表された「オミクロン株について(第6報)」にも記載されている。

<従来株やデルタ株によるこれまでの事例と比較し、感染・伝播性はやや高い可能性はあるが、現段階でエアロゾル感染を疑う事例の頻度の明らかな増加は確認されず、従来通り感染経路は主に飛沫感染と、接触感染と考えられた>

 こうした説明は世界の認識と異なっている。世界保健機関(WHO)は当初、空気感染を否定していたが、21年4月、ホームページで公開されている主な感染経路の解説に空気感染も明記。同年12月に更新された最新版でも「エアロゾルが空中に浮遊したままになるか、あるいは会話をするときの距離よりも遠くに移動する」として空気感染に注意を促している。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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空気感染対策の重視にアメリカ政府が方針転換か