週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「子宮・卵巣がん手術」の解説を紹介する。

*   *  *

 婦人科がんは女性生殖器にできるがん。患者数が多い順に子宮体がん、子宮頸がん、卵巣がんとなる。いずれのがんも統計を取り始めて以降、右肩上がりに患者数が増えている。

 特に若い女性に増えているのは子宮頸がんだ。子宮の入り口の頸部にできるがんで、性行為などでヒトパピローマウイルス(HPV)が感染することが主な原因。20~30代に多いため、20歳からの検診が推奨されている。厚生労働省は子宮頸がんワクチンの積極推奨を再開予定だ。

 子宮体がんは子宮の内膜から発症するがんで、患者は40代から徐々に増え、50~60代が中心。肥満の人がなりやすいことがわかっている。内臓脂肪は子宮体がんの発症に関わる女性ホルモンのエストロゲンを増やす働きがあるためだ。肥満に糖尿病もあわせもつ場合はさらに発症リスクが高くなる。

■早期のものは手術で根治が期待できる

 卵巣がんも40代から加齢とともに増えてくる。検診の方法が確立されていないこと、自覚症状にとぼしいことから、早期発見が難しい。排卵回数が多いと発症リスクが高くなり、妊娠・出産経験のない人や子宮内膜症を持つ人にリスクが高いことがわかっている。

 また、遺伝性の卵巣がんが約5~10%に認められ、BRCA1、BRCA2という遺伝子の変異を持っている場合、70歳までに卵巣がんを発症するリスクがそれぞれ40%、18%になる(一般の人は生涯で1.6%)。

 いずれのがんもガイドラインをベースに標準治療が定められており、早期のものは手術で根治が期待できる。進行している場合は放射線治療や抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤などの薬物療法を患者の状態によって選択する。手術と併用することもある。

 薬物療法は近年、大きく進歩しており、遺伝子検査でMSI-High(高頻度マイクロサテライト不安定性)が確認された婦人科がん(進行、再発したもの)に対して、免疫チェックポイント阻害薬のキイトルーダー(一般名ペムブロリズマブ)が、初発・再発した卵巣がんに対しては分子標的薬のPARP阻害薬が、使えるようになった。適応する患者にこれらの薬を使うことで、従来よりも生存期間の延長が期待できる。

次のページ
初期の子宮頸がんと判明したら