週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

■子宮頸がんの腹腔鏡手術は適応条件が限られる

 子宮頸がんで手術の対象になるのは、がんが子宮頸部を超えて広がっているが、骨盤壁または膣壁下3分の1に達しないII期までだ。ガイドラインにより、IB1期~II期では、「広汎子宮全摘出術」が標準治療となっている。子宮と膣の一部、卵巣・卵管を含めた広い範囲やリンパ節を切除するため、婦人科の中では大がかりな手術となる。

 ステージが早いIA1期では切除範囲が小さい「子宮円錐切除術」や「単純子宮全摘出術」、IA2期では「準広汎子宮全摘出術」が適応になることが多い。

 なお、子宮頸がんの手術は2018年から保険適用された腹腔鏡手術でおこなうという選択肢がある。からだに残る傷が小さく、術後の回復が早い点が魅力だ。

 ただし、前述の広汎子宮全摘出術については欧米の臨床試験で「局所の再発率、生存率が開腹で実施した場合に比べ不良だった」という結果が18年に発表された。

 札幌医科大学病院の齋藤豪医師は、こう話す。

「これだけで腹腔鏡手術が否定されるものではありませんが、現在はガイドラインに従い、適応条件を小さいもの、IB1期、2センチ以下に限定している病院がほとんど。希望する場合は腹腔鏡手術の経験が豊富な病院で受けることをおすすめします。具体的には体がん、卵巣がんと合わせ年間、40件以上実施しているところが目安です」

 また、腹腔鏡手術をする場合は再発防止策として、腫瘍細胞が腹腔内に散らないように処置をすることなども、ガイドラインに明記されている。この点も重要なポイントだ。

■妊娠を希望する場合の手術は、未熟児医療ができる病院を

 妊娠・出産を希望する場合は、「妊孕(にんよう)性温存手術」も選択肢となる。子宮頸がんの場合、早期の一部のみ対象の「子宮円錐切除術」を除くと、頸部を多く取り除き、子宮体部と膣を縫合する「広汎子宮頸部摘出術」がある。IB1期で、がんが2センチ以下までが選択肢となる。

「ただし、妊孕性温存手術では流産や早産が起きやすいので、未熟児医療ができる産科と連携して、出産までを管理します。必要に応じて病院を紹介してもらいましょう」(齋藤医師)

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遠隔転移がなければ手術ができることが多い