救急車で運ばれる新型コロナウイルス感染症の患者
救急車で運ばれる新型コロナウイルス感染症の患者

 2月20日で期限を迎えるまん延防止等重点措置の期限が3月6日まで延長されることが決まった大阪府。府内の自宅療養者は6万8500人、入院・療養等調整中の陽性者は6万2600人以上(18日現在)にも上る。

【写真】大阪市消防局と大阪市福祉局が高齢者福祉施設に出した要請全文はこちら

 救急車の出動要請が急増する中、大阪市消防局と大阪市福祉局が高齢者福祉施設に対し、「(119番通報より)保健所などの相談窓口に連絡を」と促すメールを2月4日に一斉送信していたことがわかった。AERAdot.が入手した文書には次のように記されていた。

<新型コロナウイルス感染症陽性者の症状悪化に伴う問い合わせ等については、保健所が受付け、必要に応じて入院・宿泊調整等を行うこととなっております。高齢者施設からの救急要請の中には、施設の医師、看護師等による観察や酸素投与等必要な処置が施されている状況であっても、保健所を介さずに、直接119番通報されている事案が見受けられます。(救急隊が対応した場合であっても、保健所に連絡し、入院の要否、搬送先の選定等の指示を仰ぐことになります)>

 このように指摘した上で、<相談窓口に連絡して頂きますよう何卒宜しくお願いいたします>と保健福祉センターや自宅療養者専用ダイヤルの電話番号を記載していた。

 大阪市内の高齢者施設で介護の仕事をしているスタッフはこの文書を知り、愕然としたという。

「確か2月7日に事務方からメールの件は知らされました。このようなメールが届いたら、大阪市内の高齢者施設は119番通報をためらいますね。うちの施設に入所している高齢者の平均年齢は70歳代後半になります。新型コロナウイルス感染がなくとも、体調の急変で119番通報をすることはよくあった。今はさらにコロナ感染もあり、病院ですぐ手当てしてもらわないと命にかかわるケースもある。コロナ患者が多く、大変だから高齢者施設は119番通報を控えてほしいと解釈できるこのメールは、ちょっと信じがたい」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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保健所に20~30回かけてもつながらず