総合防災訓練のため晴海客船ターミナルに接岸した米海軍のフリーゲート艦(手前)。奥は海上自衛隊の護衛艦。2006年
総合防災訓練のため晴海客船ターミナルに接岸した米海軍のフリーゲート艦(手前)。奥は海上自衛隊の護衛艦。2006年

 それとは対照的に、晴海客船ターミナルは、「SHIBUYA109」を手がけた建築家・故竹山実氏が設計したもの。白いメッシュの三角屋根が目を引く地上6階建て、鉄筋コンクリート造で、のべ面積約1万7600平方メートル。

「従来とは大きく違って、乗船客だけでなく、東京港のにぎわいを一般のお客様が楽しめる施設として整備されました。CIQ(税関、出入国管理、検疫所)のほか、広い送迎デッキやターミナルホール、レストラン、最上階には東京港を見渡せる展望室も設けるなど、多目的な海の玄関に生まれ変わりました」

晴海客船ターミナルからは海越しに都心の風景が楽しめる。2020年(写真:吉田公一さん提供)
晴海客船ターミナルからは海越しに都心の風景が楽しめる。2020年(写真:吉田公一さん提供)

■繰り返し訪れても息を飲むほど美しい

 それから30年。現在の晴海地区は再開発がさらに進み、「HARUIMI FLAG」(晴海フラッグ)など、真新しいマンションや商業施設が立ち並ぶ。そんななか、晴海客船ターミナルは地元の住民にとっても憩いの場となってきた。

「ここは日本橋や銀座とまったく違う、別世界なんですよ。喧騒から離れた爽やかさがある。停泊した船を眺めながらのんびりするのは気持ちいいものですよ」

 こう語る吉田公一さんは晴海客船ターミナルを訪れるのが日々の散歩コースという。吉田さんは中央区観光協会の特派員を務め、晴海ふ頭にやってくる客船のリポートなど、10年以上、同協会のホームページに執筆してきた。

「コロナの前は、外国から来るお客さんも多かったんです。客船が到着すると、税関を通って、みなさんが出てくる。そんな様子を間近で見られるんですね。お客さんが降り終わると、今度は水や食料を積み、廃棄物を降ろし、ブリッジを清掃する。大勢の作業員の方が1日中、仕事をする姿が見える。船は泊まっていても、寝ているわけじゃないんだな、と思ったりしてね。そんな光景を見るのがいちばんの楽しみ」(吉田さん)

 さらに、ここから眺める夜景も素晴らしいという。

「都心のビル群が海面に反射して、ぼくみたいに繰り返し訪れる人でも息を飲むほど美しいと感じるときがある。夜空に三日月があるときは、特にきれいですね」(吉田さん)

次のページ
新ターミナルは2023年度供用開始予定だったが