西浦博・京大教授が厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに提出した大阪府の分析データ
西浦博・京大教授が厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボードに提出した大阪府の分析データ

 これが1から乖離して推移すればするほど、HER-SYSの未処理が多くなっており、「保健所が機能不全」に陥っていることを意味する。

 西浦教授の報告によると、大阪府、千葉県、神奈川県、兵庫県などは1からの乖離が顕著で、大阪は1月下旬以降、診断から入力までに「9日」もかかっているケースもあるという。大阪は入力遅れの公表を余儀なくされるほど大幅な遅れとなってしまったのだ。

「この9日間、 陽性患者は保健所からの連絡もなく自宅にいることしかできない。これでは陽性患者を放置と言われても仕方がない」(厚労省関係者)

 大阪市役所は公式HPのコロナ発生状況を2月4日以降、更新すらできていない状態だ。

「2月1日以降、大阪府内でクラスターが170件発生しているのに、大阪市内では0件になっており、把握すらできていない混乱状況です。新規陽性者の多い大阪市内では患者数を確認するための番号だけしか入力できていない。今は感染者個人のケア、詳細入力は止め、発番のみを登録する方向で、新規陽性者数の発表だけはしっかり行いたい」(大阪府関係者)

 しかし、大阪府の大混乱をよそに東京都のグラフを見ると、<報告日付>と<報告のうち、同日中のHER-SYS入力割合>の誤差はあるが、1を少し下回るものの、ほぼ横ばいとなっている。

「大阪は医師が保健所にファックスで新規感染者の報告を送信し、それを保健所のスタッフが手で打ってHER-SYSに入力するというアナログ方式が6割とのことです。東京は保健所ではなく、医師が直接、HER-SYSに登録する対応を徹底しているので遅れがあまり生じていないのだと思います」(東京都内の開業医)

 愛知県名古屋市(人口約230万人)は、HER-SYSへの入力など保健所の事務作業をバックアップする「ハーシス(HER-SYS)センター」を1月17日にオープンさせた。河村たかし市長はこう話す。

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河村名古屋市長が語る対策