経済系学部で数学を入試に課す主な私立大
経済系学部で数学を入試に課す主な私立大

「経済学では行列など、数学IIIの範囲の知識も必要とします。そこは大学に入ってから学んでもいいと思うのですが、数学IIBがわからないと、1年次で学ぶことも多いミクロ経済学や統計学の分野などで立ち止まってしまうかもしれません。もちろん時間をかければ理解できると思います。しかし時間がかかってしまい先に進むのが難しくなり、その結果、深いところまで経済学を理解することができなくなってしまうと思います」

 上智大経済学部経済学科が入試で数学を必須としていることについては、このように考えている。

「1年生の時に数学ができないことで授業に行き詰まり、その後の4年間でつらい思いをしたり、卒業がおぼつかなくなったりしてしまう学生が出てしまうのは、大学の責任だと思っています。そのようなことにならないよう、経済学を学ぶ前に数学を勉強しておいてもらいたいのです。我々は『経済学を学ぶのに数学は必要ない』という間違ったシグナルを高校生には送りたくないのです」

■国公立大志望の優秀な学生を取り込みたい思惑も?

 大学入試に詳しい代々木ゼミナール教育情報企画推進室副部長の川崎武司さんはこう話す。

「経済系学部の入試で数学を課しているのは、入学後にも数学が必要で、高校卒業時までにこのレベルまではきちんと勉強しておいてほしい、という大学からのメッセージだと考えられます。一方で、入試科目と入学後の勉強にギャップがある例として心理学科があります。心理学は統計学を駆使する学問ですが、心理学科の入試で数学を必須としている大学は私が見たところではありません。数学をやっていなかった学生が入学してから感じるギャップは大きいでしょう」

 それに加え、「数学も勉強している優秀な学生に入ってきてほしい」という大学の狙いがあると、川崎さんは分析する。

「近年は現役志向の高まりや少子化、学内での複数学部併願の減少などで、私立大は受験生の募集に苦戦しています。一般選抜で数学が選択できる、あるいは共通テスト利用選抜で数学が必要な方式を設けているのは、文系でも数学を課すことが多い国公立大志望の受験生を取り込みたいという思惑もあると思います。併願先としてこうした経済系学部を受験する可能性は十分に考えられます」

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大学は数学必須化で受験者が減る可能性を危惧