経済学部経済学科の一般選抜で数学IAIIBが必須の上智大
経済学部経済学科の一般選抜で数学IAIIBが必須の上智大

 早稲田政経と同様、一般選抜の全入試方式で数学を必須とするのが、上智大の経済学部経済学科だ。同学科には(1)TEAP(上智大と日本英語検定協会が開発した英語テスト)スコア利用型、(2)学部学科試験・共通テスト併用型、(3)共通テスト利用型の三つがあるが、いずれの方式でも数学IAIIBの受験が必須となる。同大入学センターによれば、数学を必須としているのは、入試が始まって以来変わらないという。

 上智大経済学部経済学科長の堀江哲也教授はこう話す。

「経済学が世に現れて以来、数学が使われなかったことはありません。経済の動きは、自分の満足度を最大化しようとする消費者と、利潤を最大化しようとする企業が市場で取引することによって決まります。実際に起きている経済の動きを解析し将来を予測するためには、価格や取引量などのデータから両者の意思決定を読み解く必要があります。そのときに数学が不可欠になるのです。経済政策は、消費者や企業の意思決定を読み込んだうえで、両者に行動変容のためのインセンティブを与えるように設計されなければいけません。そのため、政策立案にも数学が必要になります」

■微分がわからないと需給曲線は「深く」理解できない

 堀江教授が例に挙げるのは、高校の現代社会などで習う「需要曲線」と「供給曲線」だ。グラフの縦軸に商品の価格、横軸に商品の量を示すとき、需要曲線は右下がりの曲線で買い手の行動を表し、供給曲線は右上がりの曲線で売り手の行動を表す。

「需要曲線の傾きが急な時、商品の価格が下がっても、需要量はあまり変わりません。反対に傾きが平らかな時、価格を少し下げると需要量は一気に上がります。企業のマーケティング活動では、市場の需要曲線の傾きを読み解き、価格を決めることが必要です。ここで、曲線の傾きとは数学における微分を意味しています。微分がわからないと、需要曲線と供給曲線のことも『深く』理解することはできません」

 私立大学の経済学部では入試に数学を課さないほうが主流だが、経済学では幅広い分野の数学の知識が必要とされると堀江教授は言う。

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「経済学を学ぶ前に数学を勉強してほしい」