昨季のダルビッシュは、166と1/3回を投げ、防御率は4.22、K-BB%は22.8%、被本塁打率は1.52/9回で、MLB通算の被本塁打率は1.15/9回であった。この成績は、同記事が示した復活の条件にぴったり合っているようだ。

 記事には、「ダルビッシュは、K-BB%では、サイ・ヤング賞候補もひしめくトップ10の中でも9位であった一方、被本塁打率はK-BB%の数字が良いトップ30の選手の中でも2番目に悪い成績だった」と指摘されている。しかし、「ダルビッシュが、引き続き良いK-BB%を残し、被本塁打率の数字を低く抑えられれば、来季(2022年)は立ち直るだろう」と書かれ、期待を寄せる。

 なぜダルビッシュの被本塁打率の数字が復活のカギになるのか。この記事では冒頭に2014年に殿堂入りした左腕トム・グラビンの活躍を振り返り、同選手の凄さを説明している。それによると、グラビンは1991年から1998年の8シーズンにわたり、ランナーを残塁させながらも本塁打を抑えられる能力を示したという。このグラビンの能力は短期的な成績を見ただけでは語れないものであるとも書かれている。

 また、投手を評価する際は、その投手の年齢と通算成績が非常に重要で、この被本塁打率というものは、分析家のデレク・カーティ氏の言葉を引用しながら、「ほぼ3年の成績を見る必要がある」とも述べられていた。

 先ほどの『ロト・ボーラー』の記事でも、昨季のダルビッシュの三振率や与四球率は、過去と変わらないことが指摘されている。つまり、現地では、たった1年の成績よりも、その選手がこれまでMLBで残してきた実績の方が将来を予測するにあたって重要視されているようだ。

 だから、現地メディアはダルビッシュが本来持つ高い能力に注目し、昨季悪いと指摘された部分(特に被本塁打率の数字)が改善されれば、再び活躍できると予想している。

 ダルビッシュの復活が期待できる今年のMLB。あとは、冒頭でも述べた新労使協定が早く合意されることを願いたい。今後行われる交渉において、両者の合意ができなければ、2月中旬からの春季キャンプは開始が遅れることになり、シーズン開幕にも影響を及ぼすことだろう。果たしてMLBが無事に開幕を迎えられるのだろうか。今後の動きに注目していきたい。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)