広島地検が公職選挙法違反(買収)容疑で家宅捜索したことを受け陳謝する河井克行元法相=2020年1月
広島地検が公職選挙法違反(買収)容疑で家宅捜索したことを受け陳謝する河井克行元法相=2020年1月

 落合弁護士によると、公職選挙法を鑑みるとカネの趣旨がポイントになるという。

「河井夫妻の事件は明らかに多くのカネの授受が買収目的だったが、今回の泉田氏や星野氏の会見を聞いていると、事件になる寸前で終わっている感はある。ただ、広島の事件があったばかりで、疑念を持たれかねないカネのことを持ち出すのは、いかがなものかと思いますね」(同前)

●多額の選挙費用 衆院5千万、参院1億が暗黙の相場

 国会議員と地元議員の対立によって明らかになった政治とカネの問題は、新潟だけではない。自民党東京都連関係者の話によると、衆院選の小選挙区では5千万円、東京都全域が選挙区となる参院選では1億円の費用がかかることが暗黙の相場だという。

 いったいどういった費用がかかるのか。ある選挙コンサルタントは、この相場は「表だけではなく裏のお金もあわせた金額」と見る。

 例えば衆院選でかかる表の費用は2千~3千万円だと言われる。事務所費、人件費、車両代、印刷代、郵送代、電話代などが主な経費となる。その際、実際に動くのが地元の区議や都議などだ。市議や区議らの政治団体に寄付して費用を払うことで表のお金として処理されるという。

 それでは裏のおカネとは何か。それは例えば政治団体を持たない民間人などに配るお金だ。地元には有力な自治会長や企業経営者などもいる。そういった人物にお金を配るとなると、費用が大きく膨らんでくるという。

 先の選挙コンサルタントはこういう。

「表のお金は政治団体の懐に入り、これは政治資金収支報告書にも記載され、政治活動にしか使えない。しかし、裏金は領収書も出ないので収支報告書の記録には残りません。私的に使えるお金になります。公選法違反罪に問われた元法相の河井克行被告の大規模買収事件では、おカネを受け取った市議がパチンコやグアム旅行に使ったことがわかっています。コロナの助成金を受け取り批判を集めている石原伸晃さんではないですが、選挙は『最後は金目でしょ』という面もあります」

(AERAdot.編集部 今西憲之、吉崎洋夫)

著者プロフィールを見る
今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

今西憲之の記事一覧はこちら
著者プロフィールを見る
吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

吉崎洋夫の記事一覧はこちら