ワシントンポスト本社(GettyImages)
ワシントンポスト本社(GettyImages)

 昨年から続くコロナ禍の影響で、世界中の飲食業や観光業など様々な業界が経営難にあえいでいるが、新聞などのメディア業界も例外ではない。アメリカではロックダウンなどの影響で広告収入が激減、1年半の間で90以上の新聞社などが閉鎖に追い込まれた。

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 しかし、その中でも数少ない新聞や雑誌社が売上を伸ばしている。それらのメディアに共通するのは、いち早くからDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組んできたことである。ニューヨーク在住の筆者が、アマゾンの創業者、ジェフ・ベゾス氏が甦らせた名門の新聞社「ワシントン・ポスト」のDX戦略を探った。【メディアDX研究1】はこちら

「コロナ禍は紙媒体における広告収入に大打撃を与えました」

 そう語るのは米研究機関ポインター研究所のメディア経営に詳しい、リック・エドモンズ氏である。同研究所によるとコロナ感染が拡大した2020年2月以降、これまでに全米にある96の新聞や雑誌などが廃刊に追い込まれたという。

 地元企業などからの広告に多くを頼ってきた地方紙などは、以前から広告収入の減少に苦しんで来たが、今回のコロナ禍がとどめを刺す形となった。

 米調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、全米の新聞業界における広告収入(紙媒体とデジタル)が2000年には487億ドル(約5兆円)であったのに対し、2020年にはその5分の1以下の88億ドル(約9000億円)まで落ち込んだ。一方、購読料などからの販売収入はこの20年間で105億ドル(1兆1786億円)から111億ドル(1兆2460億円)へと、微量ではあるが増加傾向にある。

 エドモンズ氏によると、米メディア業界においては「広告からの収入は今後ますます減少し続け、活路を見いだすには販売による収入を増加させるしかない」というのが共通の認識であるという。

 しかし日本と同様に、アメリカにおける新聞の発行部数は1990年代から年々減少傾向にあるが、どのように販売収入が増加しているのだろうか?

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デジタル・サブスクの急成長