最近では独自の視点でユニークな編成方針を立てて成功を続けているレイズの編成担当者が次々と他球団に引き抜かれていることは有名。ドジャースの編成トップを務めるアンドリュー・フリードマン氏やレッドソックスの編成責任者であるハイム・ブルーム氏はレイズのフロント出身だ。

 一方、NPBでは親会社からの出向のような形で球団に来るケースを除けば、元選手が古巣の編成部に入る例が多い。そして彼らが編成担当としてのキャリア半ばで他球団に移ることはまずありえない。親会社からの出向ならばそれが当たり前だし、元選手の場合は引退後のセカンドキャリア支援という側面もあるので、他球団出身者を引き抜くよりも自球団で引退した選手たちを優先するのが当然とも言える。

 つまりNPBで編成担当としてのキャリアを築こうとすれば、特定の1球団で頑張るしかないのが実情。だからこそ球団としてもおいそれと彼らのクビを切ることはできない。不振の責任を追及してGMを解任しようものなら、彼らのキャリアが一発で終了となるためだ。そこを気にせず人事異動できるほどNPB球団は良くも悪くもドライではない。

 そもそもNPB球団の編成トップの責任を問う声が少ないと書いたが、それ以前の話としてNPB各球団の編成責任者の名前を知っているファンは少ないのではないだろうか。もしかしたら盛んにニュースが報じられるMLB球団のGMたちなら知ってるがNPBは……というファンのほうが多いのかもしれないと思うほどだ。

 メディアとしては編成トップの人事にニュースバリューがないと判断すれば報じないので、まずはファンがひいきチームの編成権を誰が握っているのかに興味を持ったほうがいいのかもしれない。いつまでも好きなチームが強くなれないのは監督や選手のせいばかりではなく、ドラフトやトレードの決定権を握るフロントの責任なのかもしれないのだから。