おでん鍋をアクリル板で囲むなど各社工夫を凝らしている。(ファミリーマート提供)
おでん鍋をアクリル板で囲むなど各社工夫を凝らしている。(ファミリーマート提供)

 さらに、コロナ前のコンビニおでんは「地域のコミュニケーションツールとしての側面もあった」という。

「今はまだ難しいですが、毎年、町内会の行事や運動会、社内の懇親会など、コンビニおでんを大量に注文購入される機会があったのです。そういったニーズに応えて、『今年は何食分用意しましょうか』という具合に、地域の方と店が密接に関わることができていたんです」(吉岡さん)

 現在鍋でおでんを提供している店舗では、レジ横の鍋をアクリル板で囲ったり、必ず店員が商品を器に入れたりするなど、企業努力を重ねている。ローソンの広報担当者は「カップ入り商品や自宅で煮込める商品もありますが、あくまでレジ横のおでんを基本として考えている」と話す。

 吉岡さんはこう指摘する。

「コンビニはイノベーションのプロです。これまでも冷気を送ることで、上部をガラスで覆わなくても商品が溶けないような大型アイスケースを導入したりしてきました。コロナの影響でおでんのカタチは多様化しましたが、消費者のおいしいおでんを食べたいというニーズがある限り、新スタイルの鍋を発明するとか、思いもよらないおでんが生まれても不思議ではありません」

 さらにこう続ける。

「コンビニは世の中の変化、雰囲気が反映される場所です。『おでんがない』『おでんを食べたい』という声が出てきたということ自体が、世の中が少し落ち着いてきた証とも言えるかもしれません」

 これからさらに寒くなり、おでんを求める人も増えるだろう。今後のコンビニおでんがどんな進化を遂げるのかにも注目だ。(AERA dot.編集部・大谷奈央)