かまいたち(C)朝日新聞社
かまいたち(C)朝日新聞社

 10月15日、お笑いコンビ・かまいたちのオフィシャルファンクラブ『OMAETACHI』が開設された。入会者は毎月500円(税込)の会費を支払うことで会員限定のマネージャーブログや特別動画などのコンテンツを楽しむことができる。

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 いま最も勢いのある芸人と言っても過言ではないかまいたちが、ファンのためにファンクラブを始めるというのはそれほど驚くべきことではないかもしれない。だが、アイドルやミュージシャンと違って、芸人のファンクラブというのは今までにほとんど存在していなかった。

 そして、実はかまいたちだけではなく、吉本興業では大勢の芸人がこのような月額制のサービスを始めている。それは「FANYコミュ」と総称されていて、ファンクラブとオンラインサロンをミックスした新たな形のサービスであると位置づけられている。NON STYLE、ニューヨーク、空気階段、鬼越トマホークなどの人気芸人もサービスを提供している。

 ここへ来て吉本興業が月額制のサービスを始めたのには、いくつかの理由が考えられる。1つは、コロナ禍の影響でライブが減っているからだろう。芸人の本業は、舞台の上で観客を前にして芸を見せることだ。ファンはライブに足を運ぶことで芸人を見ることができた。また、出待ちをして直接声を届けたり、交流をしたりすることもできた。

 だが、コロナ禍の影響でライブが減り、ファンが芸人に直接触れられる機会が激減してしまった。だからこそ、ファンが芸人と直接つながるためのサービスが双方に求められるようになった。

 ファンというのは、自分の好きなものに関するお金の使いみちを探しているようなところがある。ほかのジャンルに比べると、お笑いというのは追いかけるためのコストが低い。ライブの入場料は音楽や演劇ほど高くないことが多いし、テレビやYouTubeのコンテンツは無料で見られる。特定の芸人を追いかけている人にとっては、会費を支払ってファンクラブに入るというのは有力な選択肢となる。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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お笑いがライブビジネスだった時代の終焉