クモガタヒョウモン(小諸市、撮影:海野和男)
クモガタヒョウモン(小諸市、撮影:海野和男)

 ミリアムさんは1980年ごろ来日した際、海野さんの写真集『チョウの世界』(共立出版)を見つけた。

「彼女はぼくの写真をすごく称賛してくれたんです。83年に『ザ・バタフライガーデン』という本を出版したとき、ぼくの写真を何枚か使ってくれた。それ以来、バタフライガーデンに興味を持って、やってみたいなと、ずっと思っていた」

■最初は仕事が忙しくて頓挫

 そんなわけで、90年、小諸にアトリエを建てた際、「すぐに花を植えて、バタフライガーデンを始めた」。

 ところが、この試みは失敗してしまう。残念ながら、庭は荒れ放題となってしまった。

「仕事が忙しくて頓挫しちゃったんです。こういうものは手間をかけないとダメ。それがよーくわかった」

 再び、バタフライガーデンづくりに挑戦したのは4年前。今度はアトリエから200メートルほど離れた場所を選んだ。

 海野さんのアトリエは林の中にあり、この30年で周囲の木々は大きく育った。そのため、前回、花壇をつくった場所はすっかり日当たりが悪くなってしまった。

 新しく整備した場所は、東西に細長い開けたところで、コナラなどの雑木林が囲っている。ここに花壇をつくり、園芸種を中心に100種以上の花を植えた。

 オカトラノオやオトコエシなど、野草を生かした花壇も設けた。さらにチョウの食草が育つ草地もつくった。

「この草地で絶滅危惧種のチョウがいっぱい発生しているんです。ウラギンスジヒョウモン、ミヤマチャバネセセリ、アカセセリとか」

フトオアゲハ(台湾、撮影:海野和男)
フトオアゲハ(台湾、撮影:海野和男)

■草の刈りすぎも伸び放題もダメ

 小諸は北に浅間山がそびえる自然が豊かな地域で、標高も極端に高くないため、春から夏にかけて、さまざまな種類のチョウが活発に活動する。

 ところが、そんな小諸でも多くのチョウが絶滅の危機にひんしているという。

 いちばんの問題は「草刈りのしすぎで、よい草地がなくなってきている」と、海野さんは訴える。

 チョウは食草に卵を産み、ふ化すると幼虫は周囲の草を食べて成長する。そこで草を刈ってしまうと「チョウがいなくなってしまう」。

 さまざまな種類のチョウが育つには「さまざまな食草が毎年生える安定した草むら」が必要で、「徹底的に草刈りをしてしまうと、繁殖力が旺盛な外来種ばかりの『悪い植物』の土地になってしまう。そういうところが多いんです」。

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「カメラ、ないなあ」