マスクをすることが当たり前になった日常生活。それによって皮膚疾患を発症する人もいるようです。マスクによって起こる皮膚炎と対策について、近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が解説します。

【こんなに違う!マスクの種類による飛沫量の差】

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 COVID-19が流行してからマスク生活が長いこと続いています。私たち医療従事者はコロナ前も日常的にマスクをすることは多かったのですが、さすがに一日中することはありませんでした。マスクはかなり煩わしいものです。呼吸はしにくいですし、ゴムが当たる耳の後ろは痛くなります。眼鏡をかけている人は曇るのも面倒ですし、マスクの下にニキビができて困ることもあります。

 私が専門としている皮膚科では、マスクによって悪化した皮膚疾患の患者さんを多く見る機会がありました。今回は、マスクによって起こる皮膚炎と対策を解説します。

 まず代表的なものがマスク下のニキビです。普段からニキビがある人が更に悪化したり、今までニキビがなかった人に新しく出現したりします。

 医療従事者はマスクに加え、フェースシールド、帽子、ガウン、手袋などいわゆる個人用防護具 (personal protective equipment:PPE)を装着します。

 このPPE関連のニキビは、外的刺激でできるタイプの機械的ニキビで、日常的にニキビができやすい人や今までニキビがなかった人にも発生します。文献によっては6時間以上のマスク着用が悪化要因と記載されています。一般の人でも長時間のマスク着用はニキビのもとです。なかなかマスクを外しづらい状況ですが、休憩をかねてトイレの個室で外したり、人混みが少ない屋外で短時間外すのもニキビ予防には有効でしょう。

 マスクに伴うかぶれもあります。マスクを顔に固定するために金属製のワイヤが使用されていますが、この成分にニッケルとコバルトが含まれていることがあります。これらの金属はともに金属アレルギーの原因として報告されています。金属製品にかぶれる人はマスクのワイヤの成分にも気をつけましょう。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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