かたまりがラジオの本番中に泣きながら彼女にプロポーズをしたり、2人が本気のケンカをして収録を中断したりしたこともあった。ギャンブル好きで多額の借金を抱えているもぐらと、極度のマザコンで繊細なかたまり。不器用な2人が生き様をさらけ出す『空気階段の踊り場』は、彼らに共感する熱狂的なリスナーを集めるようになった。

『キングオブコント2021』の決勝で1本目に披露したコントは、そんな彼らの生き様を体現したような内容だった。SMプレイの最中に火事に見舞われた2人の男が、素っ裸の情けない格好のまま必死で避難をしようとする。不器用ながらも真剣に生きている人間のかもし出す何とも言えない滑稽さが、見事に表現されていた。このネタで史上最高得点を獲得すると、2本目でも勢いそのままに逃げ切って優勝を果たした。

 いまや二児の父となったもぐらは、ギャンブルから足を洗い、借金の返済に手をつけ、少しずつ更生の道を歩み始めた。10月6日には彼らにとって初の冠番組『空気階段の空気観察』(テレビ朝日)も始まった。
コント日本一の称号を得た2人は、「芸人」というより「人間」としての魅力にあふれている。今後はバラエティ番組でその部分の才能が開花していくことが期待できそうだ。

著者プロフィールを見る
ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

ラリー遠田の記事一覧はこちら