現在、出馬表明しているのは、岸田派の岸田文雄会長だけだが、菅首相の不出馬で総裁選は一気に流動化してきた。自民党で20年以上、政務調査会の調査役を務めた政治評論家の田村重信さんがこう話す。

「菅首相が辞めたので閣僚クラスの出馬もあるでしょう。今の自民党では選挙に勝てそうなのは、あの2人しかない」

 2人というのは、河野太郎ワクチン担当相、小泉進次郎環境相だ。50歳代の河野氏、40歳代の小泉氏とまだ若い。

「自民党総裁なんてまだまだ。世代交代して、ベテラン議員から反発を受ける」との声も党内ではある。

「河野氏、小泉氏とも菅首相と同じ神奈川県の選挙区で個人的にも非常に親しい。菅首相と総裁選で一戦を交えるというのは、現職閣僚でもあり、2人ともできないでしょう。だが、菅首相が総裁選に出馬しないのであれば、2人がその気になってもおかしくない。自民党の多くの若手議員から、勝てる2人が総裁選に出馬することを望む声を私も聞いています。党内で2人が若いと文句を言う人もたくさんいるでしょう。しかし、選挙に勝たなければ、政権維持ができません。そのためなら自民党はまとまります」(田村氏)

 すでに出馬表明している岸田氏は一転、受けて立つ立場となった。

「岸田さんが菅、二階体制を見事に切り崩した。バックで安倍前首相の首相補佐官だった今井尚哉さんが動いた様子です。選挙プランナーも付いているようだ。安倍、麻生両氏もいまは歩調を同じくしているように見えはしますが、次の政権でいかに自らがキングメーカーの座を確保するか、しか考えていません。河野氏が出馬すれば、今回は2人が割れる可能性はありますね。まだ、いろんな動きがあるでしょう」(前出の官邸関係者)

 岸田派所属の衆院議員も自信を持ってこう語る。

「菅首相が辞めると言い出して、岸田会長も『本当か』と声をあげ、信じられない表情だった。正直、人気がない菅首相との一騎打ちなら勝てるだろうとの思いはあった。これで誰が出馬してくるかわからない状況になった。だが、岸田会長は推薦人を自派閥で確保し、他の派閥にも支持は広がりを見せている。誰が出馬しても大丈夫だ」

 気になるのは石破茂元幹事長の動きだ。自民党幹部がこう語る。

「石破さんを二階派が後押しする動きがでているようですね。候補者が乱立する総裁選になるかもしれない。面白くなりそうです」

 新首相は誰になるのか?。永田町は風雲急を告げている。

(今西憲之 AERAdot.編集部)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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