美人やハンサムといった一つの物差しにあてはめて褒めているのではなく、選手が「アスリートが主役」を体現しているようで好感がもてたという意見が目立った。

 アスリートビューティーアドバイザーの花田真寿美さんは、今回の五輪について、次のような感想を抱いていた。

「選手自身が自分らしさを楽しんでいるのが伝わってきました。もちろん興味のない選手はヘア・メークにこだわらなくてもいいですが、明るい気持ちになれるのならば、もっと広がればいいと思います」

 花田さんは、五輪に出場した陸上の木村文子選手をはじめ、現役のアスリートにメークの指導を行ってきた。今回、注目した外国人選手の一人は、カナダの棒高跳びのアリーシャ・ニューマン選手。真っ赤な口紅は、競技後の笑顔に花を添えていた。

 花田さん自身も大学まで本気でバドミントンに取り組んだ経験から、アスリートの本分が競技であることは十分に理解している。そのうえで、メークは本分を支える、たとえば前向きな気持ちを引き出す効果があると訴える。

「自信を持ってコートやスタートラインに立てるという声をよく聞きます。またスイッチのオンオフの役割もメークにはある。例えば、本番90分前まではスッピンでウォーミングアップし、メークをして集中するという陸上選手もいます」

 気持ちの切り替えができたり、不安な気持ちや焦りをコントロールできたりするという。メークがスイッチになるという感覚は、一般の社会にも通じることだろう。

「大切なことは自分らしくあること。自信をもって目標を達成するため、メークの力を借りることも一つの選択肢になってきています」

 さて、ファッションのプロの目にはどう映ったのだろうか。デザイナーのドン小西さんが注目したのは個性的なヘアスタイル。女子100メートルを制したジャマイカのエレイン・トンプソン ヒラ選手や銀メダルのシェリー アン・フレイザー プライス選手のカラフルな原色の髪色が印象的だった。

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ジョイナーとは「時代が違う」