巨人にはかつて松井秀喜という国民的人気を誇ったスターがいたが、やはり注目を浴びた最大の理由の一つは松井が高校野球界の人気選手だったからだろう。甲子園での高校生離れした打撃、夏の甲子園での5打席連続敬遠、そして4球団が競合したドラフトで長嶋茂雄監督(当時)がクジを引き当てた入団まで、様々なドラマがあった。多くの野球ファンが高校時代の松井が名門球団に入るまでのプロセスを見ているからこそ、その後の動向にファンがより注目した。

 近年プロ入りした現役選手でも、甲子園を沸かせたスター選手の注目度は抜群だ。19年夏の甲子園で準優勝投手となり、同年のドラフトで3球団からドラフト1位指名を受けた奥川恭伸(ヤクルト/星稜)は、先日の甲子園での“凱旋登板”が話題となったほど。1つ上の世代でも、日本中が盛り上がった第100回夏の甲子園で活躍した根尾昂(中日/大阪桐蔭)、藤原恭大(ロッテ/大阪桐蔭)、小園海斗(広島/報徳学園)、吉田輝星(日本ハム/金足農)は贔屓球団のファン以外でも成長を見守る人は多い。

 巨人には根尾らと同級生の戸郷翔征がおり、世代トップクラスの活躍を見せているが、彼らと比べると全国的な知名度は低いと言わざると得ない。

「(戸郷は)素晴らしい投手で野球ファンには知られているが世間的にはあまり有名ではない。高校2年夏に甲子園に出場しているが全国的には知られるほどではなかった。近年の巨人はドラフト1位で注目の高校生を指名しているが、抽選でことごとく外れてしまった。世間の注目を他球団に奪われている状態」(関東地区テレビ局関係者)

 ここでも述べられているように、巨人もいわゆる“甲子園のスター選手”を指名していないわけではない。一昨年には奥川、その前年には根尾を1位で指名。そのまた1年前の17年には早稲田実業時代に高校通算の本塁打記録を更新し、甲子園でも話題さらった清宮幸太郎(日本ハム)を指名したが、すべて外れてしまったという不運もある。

「クジ運なのでしょうがないが1人でも獲れていたら違った。こればかりは巡り合わせもある。また注目選手を獲得できてもプロに入って結果を残せるとは限らない。14年1位の岡本和真(智弁学園)も(高校時代からプロ注目の)強打者だったが甲子園では世間を巻き込むほどのスターではなかった。実力と人気を兼ねるのは難しい」(巨人OB)

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「客寄せパンダはいらない」と言う声もあるが…